朝起きられない、学校に行きたがらない、なんだかいつもイライラしている——そんな子どもの様子に、不安を感じている保護者の方は少なくありません。
つい「心の問題なのかな」「こっそり夜更かしをしてるのかな?」と思ってしまうかもしれませんが、背景に “見えにくい睡眠のトラブル” が隠れていることもあります。
今回は、Sleep Rest Clinic 理事長の岩根隆太先生に、子どもの不調と睡眠との意外な関係についてお話を伺いました。子どもの睡眠の質に着目し、身体面と精神面の両方から診療する睡眠専門医の視点から詳しく子供の睡眠課題を探ってみましょう。
この記事でわかること

- 子どもの睡眠トラブルはどこに相談すればいいのか?
- 睡眠が不調のときに感じる五感の違和感
- 起立性調節障害と診断されても改善しないケース
- 発達特性や骨格と睡眠トラブルの関連性
子どもの睡眠治療を専門的に行う医療機関は少ない
大木さと私には中学生の子どもがいるんですが、友だちのパパやママから、子どもの睡眠のことで相談されることがあって。
よく聞かれるのが、「病院に行ったほうがいいの?行くならどこに相談すれば?」ってことなんです。
実際、子どもの睡眠って何科で診てもらえるんでしょうか?



子どもの睡眠に悩んだとき、まず小児科を受診される場合が多いと思います。ただ、原因がはっきりしないまま「思春期特有のもの」や「気分の問題」として扱われてしまうケースも少なくありません。
——子どもの睡眠治療を行っている医療機関って、全国的にもまだ多くはないんです。
特に「小児の睡眠時無呼吸症候群」に関しては、専門的な知識や経験が求められるため、対応できる医療機関は非常に限られているのが現状です。
そもそも現在の医療体制では、子どもを診る小児科と、大人を診る内科や精神科が明確に分かれています。そのため、子どもの睡眠について専門的に診察できる医師が少ないという現実があります。


Sleep Rest Clinicが子どもの睡眠治療に対応できる背景



Sleep Rest Clinicでは、子どもの睡眠治療にも対応しています。
耳鼻咽喉科や精神科で、子どもを診てきた強み



私はこれまで、頭頸部外科を専門にしてきました。頭頸部、つまり首から上の領域に関しては、子どもと大人で大きな違いがありません。
——さらに耳鼻咽喉科では、子どもからご高齢の方まで分け隔てなく診てきたため、子どもの診療に抵抗がないんです。精神科の勉強を始めてからは、小児精神も積極的に診ていました。
そのため、子どもの睡眠に関わる原因を多面的に見極め、適切な治療につなげられるのです。
現在では、千葉県内の病院や小児科医からも「いろいろ試したけれど改善が見られない」「睡眠の質に原因があるかもしれない」といった理由で、検査のご紹介をいただくことが増えてきました。
「小児の睡眠で困ったらここに相談できる」と思ってもらえるような場所をめざし、引き続き幅広く診療にあたっています。
耳鼻咽喉科の経験から見出した「五感」と睡眠の関係



耳鼻咽喉科は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった五感に関わる診療科です。そのため、日常的に「五感にまつわる不調」を訴える方が多く来院されていました。
——五感の不調というのは、実はストレスによって引き起こされていることも少なくありません。
子どもの場合、最初はメンタルの相談でも、実際に検査をしてみると睡眠や身体的な問題が関わっていることもあります。
子ども本人が上手に体調を伝えられず、本質的にはさまざまな問題が重複している場合もあるので、複合的にみつけて治療していきます。
「気持ちの問題」と片づけられてしまうような症状の中に、実は睡眠の不調が隠れていることもあります。
そんなときにこそ、複数の観点から丁寧に診ることが大切だと考えています。





たしかに、親として考えると、小さな子どもが体調をうまく伝えるのは難しいことも多いですよね。
五感の異変や心の状態に気づくのは難しくても、「ちゃんと眠れているかどうか」なら、就寝時間を確認したり、そっと寝室を覗いたりすることはできそうです。
子どもの睡眠状態を把握することが、心や身体の状態を知る手がかりになるんですね。
小児の睡眠問題は、からだとこころの両面から診ることが重要



子どもの「朝、布団から出てこない」「学校に行きたくない」という問題。その背景に、睡眠の問題が関係していることもあるのでしょうか?私も子どもの中学受験時期に体験したのですが、子どもが布団にこもってしまうケースは、多くの保護者が経験されていると思います。
子どものイライラ・不登校に隠れた睡眠トラブル



子どもの不登校やイライラといった悩みの背景には、睡眠の不調が関係している場合があります。
——私は、そうしたケースに対して精神科的な視点からもアプローチしながら、その原因を丁寧に見極めるようにしています。
子どもの睡眠の問題が、精神的な不調と複雑に絡み合っていることも少なくありません。睡眠の不調が心の不調を引き起こすこともあれば、その逆もあります。
だからこそ、身体と心の両面からアプローチすることが重要です。お子さんの不調の原因がどこにあるのかを一緒に探しながら、必要な治療につなげていくことを大切にしています。
起立性調節障害の治療で改善しない場合、睡眠トラブルの可能性も



子どもが「朝起きられない」「立ちくらみがある」「元気が出ない」といった症状を訴える場合、起立性調節障害と診断されることがあります。
起立性調節障害(Orthostatic dysregulation:OD)は、立ち上がったときに身体の調子を整える働きがうまくいかず、立ちくらみやめまい、朝なかなか起きられない、だるさ、動悸(どうき)、頭痛など、さまざまな不調が出る病気です。
とくに思春期の子どもたちに多く見られ、成長にともなう一時的な体の変化のひとつとして起こることがあります。以前は「そのうち治るもの」と考えられていましたが、症状が強い場合には学校に通えなくなったり、家から出られなくなったりすることもあり、生活への影響がとても大きくなることもあります。


——起立性調節障害と診断された場合、昇圧剤での治療を試みます。
しかし、起立性調節障害の治療だけでは、朝起きられない症状が改善しないケースは少なくありません。
そんな子どもを睡眠の視点から検査をしてみると、小児の睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は自覚しづらい不調ですが、朝起きられない、日中にぼんやりするなどの不調として現れることがあるのです。



保護視点でいえば、眠っているときの呼吸や様子を見てあげることで、不調に気づけそうですね。


子どもとのコミュニケーション——子どもは症状を言語化しづらい



小児の場合は、自分の症状をうまく説明できないことが多いため、丁寧に話を聞き出す姿勢が大切です。私が診察するときは、できるだけ子ども本人と対話することを重視しています。
——子どもの身体の問題ですから、保護者からの訴えではなく、本人の言葉を大切にしています。そのうえで、必要に応じて保護者の方からもお話を伺いますが、あくまで “補足” として情報を整理していきます。
たとえば、親子でまったく違うことを話していることもありますが、それで否定しません。保護者と子供、どちらの訴えにも一度は共感してから、全体の流れを読み解くようにしています。





親子だからこそ、かえって気づきにくいこともあるのかもしれませんね。
病院に足を運ぶほど悩んでいる親子の気持ちに、丁寧に耳を傾けていただけるのは――子どもの健康を願いながら、どうしていいか分からずにいる親にとって、本当に心強く、ありがたいことだと感じます。
発達特性や骨格など、親子の遺伝的背景



眠れない理由が、子どもの発達や体質と関係していることもあるんでしょうか?
発達特性が睡眠トラブルの引き金になることも



睡眠の悩みの背景には、発達障害が隠れている場合もあります。
——たとえば、学校生活や日常の中で頑張りすぎた結果、脳が極度に疲れてしまい、過眠の症状が出るといったケースがあります。
この場合、お子さん自身が自覚していないことも多く、ご家族も気づいていないまま過ごしていることが少なくありません。
発達障害は、親御さんのどちらかが同じ特性を持っている場合もあり、「自分もそうだったから、普通のこと」と見過ごされてしまいがちです。
こうした背景があると、睡眠の不調が単なる生活習慣の乱れではなく、発達特性に根ざした課題であることも考えられます。
睡眠時無呼吸症候群は「骨格の遺伝」が大きく関係する



睡眠時無呼吸症候群のように、骨格の特徴が関係する疾患は遺伝的な影響を受けやすく、親子で似た症状が現れることもあります。3世代を通した治療もあります。
——親子や祖父母など、ご家族そろって受診されるケースも珍しくありません。お子さんを診察するなかで、親御さんにも検査をご案内することがあります。
睡眠の不調は、決して一人だけの問題とは限りません。家族という単位で向き合うことで、はじめて原因が見えてくることもあります。
背景にある要因は人それぞれで、ひとつのパターンに当てはめることはできません。一人ひとりの状態を丁寧に見極めながら、原因を探っていく姿勢が大切だと考えています。


まとめ:子どもの不調に、まずは睡眠から目を向けて
子どもの「眠れない」「朝がつらい」という声には、さまざまな背景が潜んでいます。
発達特性やストレス、親子間の遺伝的な要因など、原因はひとつではなく、複雑に絡み合っていることもあります。
だからこそ、単に「心の問題」と決めつけず、身体の状態や睡眠の質にもしっかり目を向けることが大切です。
もし今、子どもの不調に悩んでいるなら、「どこに相談したらいいか分からない」とひとりで抱え込まずに、専門家の力を借りてみてください。
少しずつでも、眠りとともに笑顔が戻るお手伝いができたらと願っています。



起立性調節障害は、保護者だけじゃなく、学校の先生や養護教諭の方も悩まれていると聞きます。この記事に先生方が気づいてくださったら、悩んでいる保護者の方にも、岩根先生のお話をそっと伝えてもらえたら嬉しいです。
この記事でわかったこと
- 子どもの睡眠トラブルは、できれば睡眠専門医に相談
- 子どもが五感の違和感を訴えた時は、睡眠の不調の可能性も
- 起立性調節障害と診断されても改善しない場合、睡眠改善のアプローチが有効
- 発達特性や骨格など、遺伝的要因で睡眠トラブルを抱えるケースも少なくない
監修:岩根 隆太(いわね りゅうた)
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)






