【受験生の保護者必見】夜型生活が招く学力低下・肥満リスクを博士が解説

近年、睡眠不足の子どもが増えており、健康への影響が懸念されています。

部活や習い事、受験のための塾通いなど様々な活動に取り組む子どもは、帰宅時間が遅くなり、夕飯も眠りにつく時間も後ろ倒しになって寝不足に。その結果、朝はぼんやりとした状態で目覚め、朝食も食べずに学校へいくケースもあり、昼間も眠くて授業の集中力も低下しがちです。

子どもの成長にとって睡眠がとても大切なことは、多くの保護者が理解しているはず。しかし、やるべきことが多いし、帰宅後は子どもも疲れてダラダラしがちで、時間が経過してしまう。それに、周りの受験生は当たり前のように夜遅くまで起きて頑張っていると聞くと、親としてどう対応すればいいかも悩んでしまいます。

そこで今回は、広島大学 特命教授・早稲田大学 名誉教授の柴田重信教授に「子どものための時間栄養学と睡眠」というテーマでお話をうかがいました。

食事内容やタイミングのちょっとした工夫で、子どもの健やかな成長をサポートできます。受験期のハードな生活にも役立つ内容となっているので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

この記事でわかること

  • 子どもの体内時計が夜型化するリスク
  • 子どもの夜型化を防ぐ朝食習慣
  • 気をつけたい!夜食による子どもの健康へのリスク
  • 受験期の子どもに取り入れさせたい食事法
  • 中高生の女子が特に気を付けたい夜型化のリスク
目次

小学校高学年から気を付けたい夜型化

小学校高学年になると、生活リズムが夜型に偏る子どもが増えはじめます。

夜遅くまでタブレットやスマートフォンを使ったり、受験勉強で学習塾が本格化して夜食をとったりすることで、体内時計が夜型化して眠れなくなってしまうのです。

成長ホルモンは深い眠りに入ったときに活発に分泌されますが、夜型化する不規則な生活を続けると分泌が妨げられ、成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、朝食を抜く子どもは体内時計が乱れやすく、夜型化しやすい傾向にあるため注意が必要です。朝食でしっかりと炭水化物とタンパク質をとることで、体内時計をリセットし、日中にエネルギーをしっかり燃やすリズムを作るために役立ちます。

さらに、平日と休日で就寝・起床時間が大きく異なると、海外旅行に行ったときのようなダルさを感じる「社会的時差ボケ」とよばれる状態に。社会的時差ボケがある子どもは学業成績や運動能力の低下、精神面の不安定さが見られます。

子どもの健やかな成長を守るためには「夜は早めに就寝し、朝食をゆっくり食べる時間をとる」ことが基本です。メンタルヘルスの安定や集中力の向上、成績アップのためにも、できるだけ夜更かしは避けて早寝早起きの習慣を身につけさせましょう。

では実際に、どの様な対策を保護者として支援できるのでしょうか?

子どもの生活習慣を整える鍵は「朝食」

とても大事なポイントとして保護者の方に知って頂きたいのが、「朝食はただ単に空腹を満たすためだけの栄養補給行為ではない」ということです。

朝食を食べることで、体内時計がリセットされます。体内時計はホルモン分泌や体温コントロールなどの健康を保つために重要な役割を果たしているため、朝にしっかりリセットすることが重要です。

ここでは朝食の重要性や、おすすめの朝食メニューについて具体的に解説します。

1人で朝食を食べる小学生が増加傾向に

小学校の児童において、平日の朝食を1人で食べる「孤食」が約15%に上ることがわかっています。家族構成にかかわらず、夜型の生活を送っている子どもほど孤食になる傾向が強いようです。

これは、夜遅くまでスマートフォンを使ったり夜更かしをしたりすることで、家族と一緒に朝食をとるタイミングが合わなくなってしまうことが原因の一つと考えられます。また、孤食をする子供はQOLが低いことも分かっています。

参考:日本の幼稚園児および小学生における家族の食事と睡眠および生活の質との関連性
Association of family meals with sleep and quality of life in Japanese preschool and elementary school children: A cross-sectional study.

こうした夜型の生活は、体内時計のリズムが乱れる要因となりやすく、特に成長期の子どもにとっては健康面でのリスクに繋がります。

保護者が気づきやすい点では、子どものメンタル不調(イライラ・癇癪・泣き出す・不登校)や風邪をひきやすいといった症状かもしれません。

しかし、目に見えない部分でも脳をはじめとする体の発達や学習の定着にも影響が及び、健康リスクが高まる可能性があります。子どもの体内時計を整えて健康を保つためにも、家族と一緒に朝食がとれるように家庭全体で生活習慣を見直すことが大切です。

参考:内閣府 社会生活基本調査から見た 小・中学生の欠食・孤食と主観的健康

朝食抜くと肥満や抑うつ傾向になりやすい

朝食を抜くことが肥満につながりやすいという事実は、多くの研究で示されています。

学童期や青年期の学生を対象とした調査では、朝食を毎日とらない人は、毎日とる人に比べて肥満のリスクが約1.43倍高いという結果になりました。また、大学生を対象とした別の研究でも、朝食を抜く習慣が肥満と関連していることが明らかになっています。

朝食をとらないことで、抑うつ傾向が強まる可能性が指摘されています。抑うつ傾向とは、意欲の低下や思考力・集中力の低下、自分を責めやすくなるなどの感情面に加え、倦怠感や体のだるさといった身体的な症状も含まれます。

こうした抑うつ傾向は、心だけでなく体にも影響を与えるため、発育期の子どもにとっては特に注意が必要です。朝食をしっかりとることで体内時計をリセットし、十分な栄養を補給することが、子どもの心身の健康を守ることにつながります。

参考:経済産業省 子どもの生活の現状

朝食にはタンパク質を、特に和食がベスト

子どもの成長において重要な習慣は、いわゆる「早寝早起き朝ごはん」です。

特に、朝食のタンパク質摂取量が多いほど規則正しい生活習慣が身につき、学業成績も向上しやすいことがわかっています。

朝食には肉や魚、大豆、卵、乳製品などのタンパク質をバランスよく取り入れるのが理想です。さらに、朝食に和食を食べている子どもは、パンやシリアルだけの子どもに比べて、不安やイライラが少ない傾向にあることもわかっています。

睡眠養生タンパク質

子どもでも朝食が和食の子供はタンパク質の食材に多様性が認められ、かつ朝型傾向になります。

参考:幼稚園児・小学生の朝食(和食、洋食、シリアルなど)と睡眠習慣、食習慣、ライフスタイルとの関連性
Association of breakfast styles such as Japanese, Western, and cereals with sleeping habits, eating habits, and lifestyle in preschool and elementary school children.

しかし、最近の調査によると子どもたちの朝食にはタンパク質が不足しがちな傾向にあるようです。中学生の女子は、体型を気にして朝食を抜く傾向にありますが、成長のために必要な栄養不足が懸念されます。

朝食は、心身の健康のためにとても大切な習慣です。忙しい朝でも、できるだけ卵、かまぼこ、ヨーグルト、牛乳などのタンパク質を朝食メニューに取り入れてみてください。

余裕があるときは、焼き魚や納豆、豆腐入りの味噌汁などを取り入れた和食にして、子どもの心身の成長をサポートしましょう。

参考:厚生労働省
若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題

子どもの夜食習慣が社会的時差ボケを招く

小さな子どもが夕飯の後や寝る前に、おやつやジュースを欲しがるとき、どうしていますか?

「やめたほうがいいかな」と思いながらも、ついつい『少量だったら…』と、おやつやジュースを与えてしまうこともあるかもしれません。家族の帰宅が遅いと、先に食べさせていたのに帰宅したご家族と同じタイミングで食事をとりたがる場合もありますよね。

しかし、幼児や児童の夜食が習慣化すると、体内時計が乱れ、成長に悪影響を及ぼす可能性があります。子どもがいつも夜遅くまで起きていて、何かを食べている場合は注意が必要です。

夜食を食べる子どもは夜型になり、睡眠時間も短い傾向に

3〜8歳の子ども6,177人を対象に、夜食が夜型傾向や「社会的時差ボケ」にどのように影響するかを調査しました。

すると、夜食をとる子どもは夜型になり、睡眠時間が短くなる傾向があることがわかったのです。さらに、夜食をとる子どもは就寝前にスマホを使う時間が長い傾向が見られました。

特にジュースやアイスクリームなどの甘い夜食がこの傾向を強め、体内時計が夜型に偏りやすいことが示唆されています。また、夜食をとる子どもは就寝前にスマホを見ている時間が長い傾向が見られました。

夜型化は、平日と休日の生活習慣のズレを引き起こし、「社会的時差ボケ」につながります。社会的時差ボケとは、平日と休日で生活習慣が異なることで睡眠時間が不規則になり、その結果、体内時計が乱れて心身に悪影響を及ぼす状態のことです。

これは、海外旅行時の時差ボケと似た状態で、倦怠感や集中力の低下といった症状を日常的に引き起こしてしまいる状態で、子どもにも起きます。

体内時計を正常に保ち、十分な睡眠時間を確保するためには「夜食」「夜間のスマホ使用」の両方を減らすことが重要です。

参考:日本の幼児における夜間間食とスクリーンタイムの睡眠行動との関連性:横断研究
Association of Night Snacking and Screen Time on Sleep Behavior in Japanese Toddlers: A Cross-Sectional Study. 

家庭環境が幼児・児童の夜型化に影響することも

子どもの夜型化は、家庭環境も影響することがわかっています。

調査によると、家族の帰宅時間が遅い、または家庭全体で忙しいスケジュールを抱えている場合に、子どもが夜食をとる傾向が見られました。夕食の時間が遅くなることで夜食が習慣化し、子どもが夜型の生活リズムに傾きやすくなることが指摘されています。

家庭環境、つまり同居する保護者の生活リズムと食事習慣が、幼児期の生活リズム形成や成長に大きな影響を与える可能性があるのです。

忙しい現代社会で、共働きも増えています。家庭全体の生活パターンを、子ども優先に合わせるのはなかなか難しいかもしれません。しかし、子どもの発育や健康を守るためには、できるだけ夜食はとらないように促し、夕飯は早めに済ませる工夫をしましょう。

では、どのようにすれば良いのでしょうか?具体的な対策を柴田先生に教えていただきましょう。

子どもの夜型化による肥満を防ぐために、夜食を減らす工夫を

研究によると、睡眠時間が短い子どもは炭水化物や甘い食品を好む傾向があり、特に夜には高カロリーなおやつを選びやすいことがわかっています。

こうした高カロリーなおやつは、必要以上に摂取しないことが理想です。しかし、睡眠不足の状態では満腹感が得られにくく、「まだ足りない!もっと食べたい」という気持ちが続いて、過食につながりやすくなります。この傾向が習慣化すると、さらに健康リスクが高まります。

子どもの健康を守るために、夜のおやつを家庭全体で控える工夫をしてみてください。

また、夜のスマホ利用はできるだけ短くし、幼児期には絵本を一緒に読む家族時間を取り入れるのも効果的です。夜は家族でリラックスした時間を過ごし、十分な睡眠時間を確保することで、子どもの健康を守りましょう。

参考:医薬ジャーナル(柴田 重信)
【睡眠・眠りの基礎と臨床】 食行動と概日リズム調節機構

受験期の子どもにおすすめ食事法「分食」とは?

受験期の子どもは、どうしても夜遅い時間の食事が増えます。

例えば夕方から塾に通うと、食事をとる時間もないまま夜まで勉強して、帰宅が21時を過ぎることも少なくありません。しかし、夜遅くの食事は血糖値の急上昇や肥満を引き起こし、睡眠の質も悪くなって、集中力の低下による成績悪化にもつながります。

そんな受験期の子どもにおすすめの食事法が「分食」です。一体、どの様な食べ方なのでしょうか?

夕方に主食を食べ、夜におかずを食べよう

簡単に言えば分食とは、食事を複数回に分けてとる方法です。

具体的には、夕方におにぎりやパンなどの主食をとり、塾が終わった後には肉や魚、野菜などの主菜・副菜をとるようにします。これにより、夜遅くに糖質を摂ることを避け、血糖値の急上昇や夜型化を避けながら空腹感を満たせるのです。

さらに、夕方の主食と一緒には、ぬるめのお湯でいれた緑茶を飲むこともおすすめです。お茶に含まれるカテキンには血糖値の上昇を抑える効果があるため、体の負担を軽減する助けになります。

ただし、カフェインで眠れなくなる体質の場合は、刺激が強いのでカフェインレスの茶葉を選んだり、無理に飲む必要はありません。変わりにリラックスできる、カフェインレスのハーブティーをのみましょう。温かいお茶で休憩時間を感じられることがポイントです。

分食によって夜型化を防ぐと成績向上につながる、大人もおすすめ

分食を取り入れることで夜型化を防ぎ、集中力や学習パフォーマンスの向上に役立ちます。

夜遅くに主食を食べると、炭水化物によりインスリンが分泌され、体内時計がずれてしまう可能性があります。これは、体が夜遅くの食事を「朝の食事」と誤認し、夜型化しやすくなるためです。

マウスの研究でも、夜遅くにエサを与えた場合、体内時計が夜型になりやすい結果が出ています。一方、エサを2回に分けて、夕方に半分を与えたところ、体内時計の乱れが抑えられたのです。

分食は受験生だけではなく、習い事で帰宅が遅くなる子どもや、残業の多い大人においてもとても効果的です。夜遅くの食事がもたらす高血糖や肥満、夜型化による睡眠不足を軽減し、心身ともに健やかな状態を保ちます。

受験期の子どもは、分食を取り入れることで学習効率を高め、健康を維持しながら成績アップを狙いましょう!

中高生の女子に多い夜型生活が抑うつの要因に

実は中高生の女子は、男子よりも夜型化が顕著です。

研究によると、中高生の女子は睡眠のタイミングが不安定なことが多く、平日と休日の生活習慣のズレを示す「社会的時差ボケ」の数値が高い傾向にありました。社会的時差ボケの数値が大きい女子ほど、不安感やイライラ、食欲不振といった精神面の不調を感じやすいという結果になったのです。

男子に比べて、女子は社会的なつながりを大切にして、SNSや友人とのやりとりを夜遅くまで続ける傾向にあります。夜遅くまで起きていると小腹がすいて、おやつを食べてしまうこともあり、夜食がさらなる夜型化を後押ししている可能性も考えられます。

夜型の生活や睡眠不足は、日中の眠気や疲労感の増加、集中力の低下と関連します。さらに抑うつ傾向も引き起こしやすいとされ、心が不安定になりがちな思春期の女子は特に注意が必要です。

生活習慣を整えることが、女子の心身の健康を守り、日常の安定や集中力の向上につながります。人間関係のつながりも大切ですが、ときには自分の心と身体を優先させ、夜のスマホを控えるように促すことが大切です。

参考:日本の子供と青少年における睡眠不足と社会的時差ぼけ関連のネガティブな気分に対する性別の相互作用効果
Interaction effects of sex on the sleep loss and social jetlag-related negative mood in Japanese children and adolescents: a cross-sectional study

まとめ:子どもの健康と成長を守るために、食生活を見直そう

現代の子どもの健康や成長を守るためには、食事や生活習慣の工夫が欠かせません。

夜食や夜型生活は、体内時計の乱れや成長ホルモンの分泌低下につながり、学業成績やメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。夜型化や睡眠不足は肥満にもつながるため、健康的な体型を保つためにも食生活を見直すことが大切です。

体内時計を整えるためにも、朝食はしっかりと食べ、夜食や夜のスマホ使用を控えましょう。家庭環境が子どもの生活習慣に大きく影響するため、できるだけ家族で協力しながら、食事や生活習慣の改善に取り組んでみてください!

この記事でわかったこと

  • 子どもが夜型生活になると肥満を助長し、心身共に健康リスクが高まる
  • 毎日タンパク質が豊富な朝食を食べるのがベスト
  • 子どもの夜食習慣は、夜型化による「社会的時差ボケ」を引き起こす
  • 塾に行く前に主食を、帰宅後におかずを食べる「分食」で受験期を乗り切る
  • 中高生の女子は男子よりも夜型化が顕著で抑うつが多い傾向にある

参考:時間栄養学

関連書籍

時間栄養学について、もっと詳しく知りくなりましたか?本記事を監修している柴田重信先生の「食べる時間でこんなに変わる時間栄養学入門」をチェックしてみてくださいね。

▼参考書籍

【書籍情報】
タイトル:食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門(ブルーバックス)
著者名:柴田重信
出版社:講談社
形態:文庫本 / kindle版/ 楽天kobo版

監修者

*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)

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