寝ても、なんだか疲れがとれない……。日々の不調を抱えてはいませんか?
睡眠によって得られる睡眠休養感は、ただ長く眠ればいいという単純な話ではありません。年齢変化、季節性、日中の活動、抱えているストレスなど、さまざまな要素が睡眠休養感に影響します。
そこで今回は、医学博士の山本竜隆先生にオプティマムヘルス視点で「自分にとってより良い健康を手に入れるための睡眠」についてお話を伺いました。
なんとなくダルい、寝ても疲れがとれないといったお悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- オプティマムヘルスとは
- 適切な睡眠時間の考え方
- 快眠のための具体的な習慣
- 季節ごとの眠り方の違い
- 睡眠障害に気づくための視点
オプティマムヘルスとは?――「理想像」より「いまの自身」に最適な健康
たくさんのヘルスケア情報に囲まれる今、ご自身の健康のあり方に戸惑ってしまうこともあるかもしれません。そんなときに知っておきたいのが、「オプティマムヘルス」という考え方です。
まずは「オプティマムヘルス」について知り、自身の心身と向き合うヒントを見つけてみましょう。
今、注目される「オプティマムヘルス」とは?
オプティマムヘルスとは、「それぞれの人にとって最高・最善で、最適な健康」の在り方です。
健康と聞くと「病気がない状態」や「理想的な体型」などを思い浮かべるかもしれませんが、オプティマムヘルスでは、そうした一律の基準を目指すわけではありません。
年齢、住んでいる場所、仕事や生活スタイル、さらには思考として何を大切にしているか――それぞれの人が置かれた状況によって、「ちょうどいい健康のかたち」は違います。
たとえば、数か月後に孫と旅行へ行きたいと願う高齢の方にとっての健康と、オリンピック選手が金メダルを目指すための健康では、その内容も厳しさもまったく異なります。
また、若いころに合っていると感じた食事や生活習慣が、年齢を重ねると合わなく感じることもあります。
そして、自身に合う方法が、誰かにとっても正解とも限りません。ある人には効果的な健康法が、別の人には負担になってしまうこともあります。誰にとっても同じ “正解の健康” が定義されているわけではありません。
どんな人生を送りたいのか――それぞれが持つ夢や目的によって、目指す健康のあり方は自然と変わっていきます。だからこそ、ご自身の心と身体にしっくりくる習慣を見つけていくことが大切です。
まずは、自身が今の健康状態にどう感じているかに気づくこと。今を知ることが、これからの最高・最善で最適な健康の在り方につながっていきます。
「ミクロ」と「マクロ」。両方の視点で自分の健康を考える
どのようにして、自身の心と身体にしっくりくる習慣を見つけて行けば良いのでしょうか?
オプティマムヘルスを実現するためには、「自身に合ったやり方(ミクロ視点)」と「多くの人に当てはまる方法(マクロ視点)」の2つの視点を持つことが大切です。
たとえば「ある寝具が健康にいい」とされても、すべての人に合うとは限りません。多くの人にとってはぐっすり眠れる寝具でも、一部の人には合わないこともあります。
多くの人が効果を実感しているサプリメントや、流行りの健康法も、体質に合わなければ、かえって調子を崩してしまう可能性すらあります。
だからこそ、メディアで話題の方法(マクロ視点)を鵜呑みにせず、「本当に自分に合っているか?(ミクロ視点)」という体感がとても大切です。

ご自身が試してみて、日中の身体が軽くなる、心が落ち着く、ぐっすり眠れた――そんな感覚があれば、それはご自身にとってプラスの習慣といえるかもしれません。
情報があふれる今の時代、健康についてたくさんの知識を持つことはとても簡単です。
しかし、どんなに良いとされている方法でも、「大多数に当てはまる」だけで、「自身に当てはまる」とは限りません。それは、たとえご家族や同年代の友人の口コミであっても同様です。
各個人で、体質も、生活環境も、感情も異なります。
健康を守るには、あくまで自分自身の感覚を確認しながら、自身の体質に合うかどうかを見極める視点が必要です。
「どんな健康法を取り入れるか」というマクロの視点だけではなく、「自分の身体は今どう感じているか」というミクロの視点を必ず大切にしてみましょう。
オプティマムヘルスを支える快眠のコツ5つ
良質な睡眠は、オプティマムヘルスを支える土台です。
しかし「良質な睡眠」の定義は意外と曖昧で、自分に最適な睡眠時間を聞いても、「8時間がベスト」「5時間で十分」など意見は分かれます。
実際のところ、必要な睡眠時間には個人差があるため、一概に「何時間眠ればいい」とは言えません。短時間でも回復できる人もいれば、長く眠らないと調子が悪くなる人もいます。
ここで大切にしたいのが、睡眠において大切な3つの要素です。
- 寝つきがよい
- ぐっすり眠れて、休養感がある
- 日中に、生活が辛いほど眠くはない
オプティマムヘルスを実現するために、「寝つきがよい」「ぐっすり眠れる」「スッキリ目覚められる」の3つを叶えるためのヒントを5つご紹介します。
まずは簡単にできそうだと思えることから、1つずつ試してみて、自身に合う快眠法を見つけてみましょう。
快眠のコツ①:目が覚めたら、まずは朝日を浴びよう
良質な睡眠は、朝の過ごし方から始まります。
朝起きたら、カーテンを開けて、朝日を浴びることを習慣にしてみましょう。
ヒトの体内時計は約25時間で動いていますが、地球の1日は24時間。この約1時間のズレは、朝日を浴びることでリセットできます。体内時計が整うと、夜になるころには自然と眠気が訪れ、心地よい睡眠につながるのです。
本来であれば、夜明けとともに寝室が少しずつ明るくなり、それに合わせて眠りが浅くなって、自然に目が覚めるのが理想です。
けれども都市部では、夜でも外が明るいため、遮光カーテンを使っている方も多いですよね。
眠るときに光を遮るのは大切ですが、朝になっても部屋が真っ暗のままだと、身体が「朝が来た」と気づきにくくなります。
その状態で、目覚まし時計の大音量に起こされると、深い眠りから無理に引きはがされるような感覚になり、寝起きのつらさを感じるかもしれません。
遮光カーテンを使う場合は、遮光率が高すぎないカーテンを選んだり、ベッドの位置を調整したりするなど、できる範囲で工夫してみてください。
自然のリズムに合わせて、睡眠の質を高めていきましょう。

快眠のコツ②:昼間の活動量を増やす
本来、心と身体がほどよく疲れていれば、自然と眠気が訪れるものです。
しかし、日中にあまり身体を動かしていなかったり、昼と夜の区別がつきにくい生活を続けていると、夜だけ「眠りたい」と思ってもなかなか眠れません。
デスクワークなどで運動不足を感じている場合は、昼間の活動量を少しずつ増やしてみましょう。
実は昼間の過ごし方を工夫するだけで、夜に自然と眠りにつきやすくなるケースは意外と多いのです。

快眠のコツ③:就寝3時間前までに食事を終える
夜の食事は、就寝3時間前までに終えるようにしてみましょう。
食後は内臓が消化・吸収のために働くため、この状態で眠ると眠りが浅くなったり、朝の目覚めが悪くなったりします。
直前の食事は胃が重くて、寝つきが悪くなることもあります。
仕事で夕食が遅くなる場合は、消化のよい食事を腹6〜8分目にするなど、内臓への負担を減らす工夫をしてみてください。

快眠のコツ④:寝室の温度・湿度を調節する
暑すぎたり寒すぎたりすると、ぐっすり眠るための適切な体温調節がうまくできません。
睡眠中の室温も同じように、季節に合わせて整えることが大切です。ヒトが快適だと感じる温度は、季節によって少しずつ変わっていきます。
たとえば、夏は室温が28度を超えないようにし、冬は16~19度くらいに保つと、眠りやすくなるといわれています。
寝るときに「暑くて寝苦しい」「寒くて目が覚める」といったことがないように、寝具やエアコン、加湿器を上手に使って室内の温度と湿度を整えてみましょう。
快眠のコツ⑤:スマホ、音楽、読書などの「ながら寝」を避ける
なかなか眠れないとき、つい手に取ってしまうスマートフォン。
ニュースを見たり、SNSをチェックしたりして眠気が来るのを待つ……そんな習慣がある方が多いかもしれません。
スマートフォンやパソコンなどから発せられるブルーライトは、可視光線の中でも波長が短く、目の奥まで届いてしまいます。これにより脳が刺激を受け、眠気が遠のいてしまうのです。
特に、横になったまま画面を見る「ながら寝」は、画面と目の距離が近くなり、より強い刺激を受けることになります。眠れない不安からスマートフォンを見てしまう気持ちもわかりますが、かえって睡眠の質を下げてしまう原因にもなるので注意が必要です。

また、音楽を聴きながら眠るのも、脳を刺激するため、睡眠の質を下げてしまうことがあります。睡眠の質を高めるためには、無音が理想です。
もし、入眠時にBGMを利用したほうが眠れるなら、入眠するタイミングを見越して30分〜1時間程度でスイッチが切れるようにし、就寝後は静かな環境で眠れるように設定することを意識してみましょう。
本を読みながら眠るという昔ながらの「ながら寝」も、内容によっては注意が必要です。
難しい表現の古典や哲学書などは眠気を誘うかもしれませんが、ストーリーが気になる本や興味を引く内容の本は脳を活性化させ、かえって眠れなくなることがあります。
布団の中で読むなら、あえて退屈に感じるような本を選んでみましょう。
自然な睡眠時間は季節変動があるもの、季節を味わう
季節によって、睡眠時間が変わるのもよくあることです。
たとえば冬は夜が長く、自然と睡眠時間も長くなります。反対に夏は日が長く、活動的になるぶん、睡眠時間が短くなっても過ごしやすいと感じるかもしれません。
東洋の養生の考え方では、こうした「季節に合わせた眠り方」はごく自然なこととされています。昔の日本人も、太陽の動きにあわせて暮らし、眠っていたのかもしれません。
現代では一年を通して同じような生活習慣で過ごすことが多いですが、本来、睡眠はもっと柔軟でよいはずです。
無理に睡眠時間を決めすぎず、季節の流れとともに変わっていく身体の感覚に、少しずつ寄り添ってみてください。

画像提供:山本医師が立ち上げた「旧:日月倶楽部」より
十分に眠っても休養感がないなら、睡眠時無呼吸症候群を考慮
どれだけ工夫をして、十分に眠ったつもりでも、「ぐっすり眠れた感じがしない」「日中に強い眠気におそわれる」といった場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が関係している可能性があります。
とくに「いびきが大きい」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きても疲れが残っている」といった症状があるときは、注意が必要です。

眠っている間のことは、自身では気づきにくいものですが、実際に検査をしてみると、多くの方が睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
産業医として多くの企業を担当していると、特に運送業などで働く方の健康診断では、この病気が発見されるケースが増えていると感じています。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、身体にかかる負担も大きくなります。放置していると、様々な生活習慣病や日中の事故リスクにつながる、見過ごせない睡眠疾患です。
さらに不眠が長く続いたり、日中に強い眠気で日常生活に支障が出ているような場合は、そのほかの睡眠障害の可能性もあります。睡眠時の疾患は、睡眠時無呼吸症候群以外にも多くの種類があります。
日中の生活に影響のでる眠気や不眠を感じる方は、個人の判断で放置せず、専門の医師に早めに相談ましょう。
睡眠が改善されてより良い休養を得られることは、オプティマムヘルス(自分にとって最高・最善で、最適な健康)を感じていけるようになるでしょう。
まとめ:無理のない睡眠習慣で、オプティマムヘルスを育てよう
オプティマムヘルスとは、一般論や誰かの理想を単純になぞることではなく、今の自身にとっての “最適な健康” を見つけていくこと。
睡眠も同じで、大切なのは「こうあるべき」ではなく、自分の心身に合うリズムを整えることです。
朝の光を浴びる、昼間に適度に活動する、夜は静かな環境をつくる――そんな小さな習慣の積み重ねが、やがて自然な眠りと心地よい毎日につながっていきます。
自身にとって心地よい選択を、ひとつずつ試してみましょう。
この記事でわかったこと
- 健康は「今の自分にとって最適かどうか」が大切
- 睡眠は量より質、自分に合ったリズムを見つけることが重要
- 朝日を浴びる・体を動かすなど、シンプルな工夫が効果的
- 季節の変化に合わせて睡眠時間も調整していい
- 自覚がなくても、眠れなさの裏に病気があることもある

関連書籍
オプティマムヘルスについて、もっと詳しく知りたくなりましたか?本記事を監修している山本竜隆先生の著書「「オプティマムヘルス」のつくり方 – 健康を実感できない日本人のための究極の処方箋」もチェックしてみてくださいね。
▼参考書籍

【書籍情報】
タイトル:「オプティマムヘルス」のつくり方 – 健康を実感できない日本人のための究極の処方箋
著者名:山本竜隆
出版社:ワニブックス
形態:新書
発売日:2021.12.08
監修:山本 竜隆(やまもと たつたか)
山本先生のプロフィールページを作成します。
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)

