不眠に鍼灸ってどうなの?鍼治療がもたらす睡眠改善の力を博士が解説

不眠の認知行動療法と鍼灸

眠れない夜が続くと、日中のパフォーマンスや気分にまで影響し、生活全体が重く感じられてしまいます。

そんなとき、薬以外の選択肢として注目されているのが「鍼灸」です。

肩こりや腰痛などの体の不調だけでなく、不眠や睡眠の質改善にも効果が期待され、心まで軽くなる方も少なくありません。

今回は、帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科 講師で、はり師・きゅう師や公認心理師の資格を持つ脇英彰先生に鍼灸と睡眠の関係について詳しく伺いました。

上級睡眠健康指導士である睡眠養生 編集長の大木都との対談形式で、鍼灸と睡眠の深い関係についてお届けします。

この記事でわかること

  • 鍼灸が不眠や睡眠の質改善にどのように役立つか
  • 病気と診断される前の「未病」段階への鍼灸の活用方法
  • 鍼灸院や施術者の選び方、痛みが不安な人への対応
目次

鍼灸師として、睡眠治療に注目したきっかけ

さとちゃん

先生との出会いは、脇先生が医学会で鍼灸と睡眠に関する発表をされていたことがきっかけ。とても面白いお話に、その場で取材依頼をさせていただきました!

本シリーズでは、脇先生に「睡眠改善と鍼灸の関係」について詳しくお届けできればと思います。

鍼灸師の脇先生が、なぜ睡眠にアプローチしようと思ったのか

さとちゃん

まずは脇先生が、睡眠治療に注目したきっかけを教えてください。

脇英彰先生

鍼灸院には、慢性的な痛みや肩こりで来られる方が多いんです。

ところが、アンケートを取ったり、会話をしていくうちに、メンタル面や睡眠に課題を抱えている方がとても多いことに気づきました。

――さらに、胃のもたれなど内臓の不調を持つ方も少なくなく、総合的に見ても睡眠の影響が大きいと感じたんです。そこで、まずは睡眠にアプローチしたいと思うようになりました。

もうひとつの理由は、私自身の経験です。大学院時代や仕事で忙しい時期に睡眠時間を削ってしまい、メンタルや体の不調を強く感じたことがありました。その体験からも、睡眠を整える重要性を実感しています。

さとちゃん

睡眠は健康の土台、ということですね。

内臓や肩こりなどの体調不調に、睡眠課題も関わっていると。。。

中国の研究に学び、日本で生かす複合的なケアの形

さとちゃん

多くの方を治療されていると思うのですが、はり治療は不眠治療や睡眠改善には有効なのでしょうか?

脇英彰先生

中国の研究では、不眠症に対して週5回、少なくとも週3回施術することで良い変化が得られたという報告があります。

さとちゃん

さすが、中国!!
1週間のうちに、そんなに多くの鍼治療を受けるんですね。

脇英彰先生

はい。ただ、日本では費用や通院頻度の面から週1回が限度という方がほとんどです。

そのため、鍼灸だけでなく、セルフケアや認知行動療法(CBT)などを組み合わせるほうが、睡眠のケアをより持続させやすいと考えています。

さとちゃん

なるほど。日本では、そんなに頻繁に通うのは難しいでしょうし。
金額面でも、週1回が限度という方が多いですよね。

「認知行動療法」という言葉、もしかしたら聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれません。

これは、不眠の原因となる考え方のクセや行動パターンを見直していく心理療法のことです。専門家の助けを借りて、自分に合った眠り方を見つけていくイメージですね。

不眠治療に特化した不眠のための認知行動療法(CBT-I)もあり、不眠治療での医療シーンでも活用されています。

参考記事:薬に頼らない不眠症治療の選択肢「認知行動療法(CBT-I)」とは?

さとちゃん

そう考えると、来院時以外のセルフケアも、すごく大事になっていくのですね。

脇英彰先生

そうですね。だからこそ、限られた通院時間の中で、どんな話題から入るかも大切だと思っています。

――特に日本では、メンタルの不調を直接話すことに抵抗を感じる方が多く、本音を引き出すのが難しい場合もあります。

でも、睡眠のことなら比較的話しやすく、そこから体や心の状態に少しずつ触れていくことができます。

睡眠が整えば気持ちにも良い変化が期待できますし、そういった理由から鍼灸と睡眠を結びつけるアプローチを広めているんです

痛みから眠れぬ夜まで、多様な悩みに応える鍼灸の現場

さとちゃん

ありがとうございます。では、具体的にはどのようなお悩みを持った方に鍼灸治療を行っているのでしょうか?

慢性的な身体の痛みをきっかけに来院

脇英彰先生

来院のきっかけとして多いのは、やはり肩こりや腰痛など身体の不調です。

――ところが、施術中にお話をうかがっていくと、「実は眠れない」「熟睡感がない」といった睡眠の悩みを抱えている方が少なくありません。

そこで鍼灸では、まず痛みにアプローチして筋肉のこわばりや血流の滞りを和らげますその結果、眠りにつきやすくなったり、夜中に目が覚めにくくなったりと、睡眠の質が改善しやすくなります

十分に休息がとれるようになると、日中の疲労感や集中力の低下も軽減され、気持ちも前向きになります。こうして心身が連動して整っていくことで、身体の痛みも徐々に軽くなり、日常生活全体のパフォーマンスも上がりやすくなるんです。

さとちゃん

たしかに、しっかり眠れるようになると表情も明るくなりますし。毎日の動きが軽やかになりますよね!

そうした変化は、通い始めてからどのくらいで感じられる方が多いのでしょうか?

脇英彰先生

「寝つきが悪い」タイプの方は、施術を受けた日は「すぐ眠れました」と感じる方が多いようです。

中途覚醒や早朝覚醒にお悩みの方は、鍼灸治療を継続することで改善につながるケースもあります。 

睡眠薬の副作用のサポートにも

さとちゃん

すでに不眠症の治療をすすめている場合でも、鍼灸が今の治療に対してサポートになる場面はありますか?

脇英彰先生

そうですね、睡眠に関するお薬の副作用を軽減するという研究データがあります。

――すでに薬を処方されている方で、さまざまな理由から治療がうまくいっていない場合にも、鍼灸に頼っていただけると良いのではないかと思います。 

具体的には、日中ぼんやりしてやる気が出ない、体がだるい、胃の調子が悪くなるといった副作用を抱える方で、鍼灸を取り入れると状態が落ち着く場合があります。

また、睡眠薬を使ったあとに「日中の眠気が強くなった」と感じる方もいますが、その背景には薬の影響だけでなく、もともとの睡眠の質が下がっていることが関係している場合も少なくありません。

こうした場合、鍼灸で体の緊張を和らげ、眠気やだるさが改善することで、気持ちも少し軽くなることがあります結果として、「ずっと薬のせいだと思っていた不調が、別の要因だったのかもしれない」と気づかれる場合もあるんです。

さとちゃん

気付けない課題に、違うアプローチから変化を感じるのはとても良いですね!

確かに、睡眠薬を飲むことで眠れるようにはなったものの、日中のだるさが取れなかったり、朝起きられなかったり、体が重く感じる方もいらっしゃいますよね。

そうした状態が、鍼灸によって少し体が軽くなり、毎日を快活にすごせるようになるんですね。

そもそも鍼灸院って、どんなことを求めて行くところ?

さとちゃん

お話を聞いて、改めて鍼灸って本当にすごいなって思いました!

でも、鍼灸って古くからの効果が高そうな印象がありつつ。それでも、未体験の方には「針を体に刺す」と言う時点で、とても怖い印象を持っている方も少なくはないと思います。

私も初めて漢方医に治療を受けた際は、ドキドキしていて。めちゃくちゃ緊張しました。

そんな不安を感じている方にこそ、体験してみる価値を伝えたいのですが。鍼灸はどんな悩みや不調のときに行って、良いものなのでしょうか。

自分の身体について違和感があるとき、改善させにいくところ

脇英彰先生

そうですね。基本的には、自分の体や心に違和感を覚えたとき、それを整えに行く場所だと思っています。

――まずは症状の大小にかかわらず、一度試してみてもいいと思います。もちろん、すべての不調に対応できるわけではありません。ただ、その不調の背景にある要因を多角的に探り、鍼灸の領域でできるケアを見つけていくことはできます。

例えば「めまい」がある場合でも、その原因が首や肩のこわばりに関係していることがあります。病院では検査で異常がなければ経過観察になる場合もありますが、鍼灸では「この視点はどうか」「別の場所は影響していないか」といった角度から身体を診ていくんです。

そうして、自分では気づけなかった原因を鍼灸師に気づかせてもらい、心身のつながりも含めて整えられる。それが、鍼灸ならではの魅力だと思います。

さとちゃん

たしかに、多くの方は「腰痛などの具体的に気づいている痛み」や「事故でむち打ちになった」など、はっきりした症状への自覚がないと鍼灸に行かないケースが多いかもしれませんね。

でも、認知行動療法と組み合わせるお話のベースには、鍼灸は不定愁訴――つまり病気まではいかなくても「なんとなく調子が悪い」という状態に対応できるという強みがありますよね。

未病の状態から、早めのケアで改善する

脇英彰先生

東洋医学の鍼灸は「未病」といって、まだ病気と診断されるほどではないけれど、なんとなく不調を感じる段階からケアできるのが特徴です。

――例えば「疲れやすい」「よく眠れない」「肩がずっと重い」など、検査では異常がないけれど、放っておくと悪化するかもしれない、そんな状態も含まれます。

鍼灸では、そうした段階から体や心の変化を見極め、整えていくことができるのが大きな特徴だと思います。

さとちゃん

なるほど。薬による治療が主流な中でも病気症状が出る前から、いち早く体を整えられる鍼灸は、睡眠のケアにも心強い存在ですね。

鍼灸は怖い? 極細針から刺さない鍼まで多彩な施術法がある

さとちゃん

ご体験前の「鍼は痛そう」「怖い」というイメージを持っている方に向けて、実際は「そうではない」ということを、具体的にお伝えいただけると嬉しいです!

脇英彰先生

鍼は、注射針と比べてとても細く、きれいに研ぎ澄まされていますし、シリコンでコーティングされているものもあります。

脇英彰先生

顔に使うような非常に細い鍼を、体に打って治療することもできますし、ほとんど刺さない円皮鍼(えんぴしん:シールタイプ型)など、痛みをほとんど感じない治療法もあります

ですから、痛みが心配な方は、最初から「鍼灸治療は初めてで痛みが苦手です。」と伝えてみてください。

多くの場合、鍼灸師の方がその方の希望に合わせた工夫をしてくれると思います。

さとちゃん

なるほど!初めは緊張しますし。

痛みが苦手なことを、予約時などにお電話で事前相談してもいいんですね。先に伝えておけると、初めての体験も「気が楽」ですね。

脇英彰先生

「痛みが怖い」と、正直に伝えて大丈夫ですよ!!

鍼灸は多様、あなたに合う方法がきっとある

脇英彰先生

鍼灸は、施術する人によって方法やアプローチが本当にさまざまです。

せっかく鍼灸に興味をもってくださったのなら、一度合わなかったからといって「自分には向かないのかな」と思い込まずにいてほしいです。

施術者が変われば、やり方や感じ方も大きく変わります

ぜひ、合わないと感じた場合には他の先生も試してみて、あなたに合う治療を見つけてほしいと思います。

まとめ:鍼灸で広がる、睡眠改善の可能性

鍼灸は体の不調だけでなく、睡眠の悩みにもアプローチできる方法です。

施術者によって施術の方向性は異なりますが、自分に合ったスタイルを選べば、不眠の改善やリフレッシュ感の向上が期待できます。

信頼できる先生と出会い、安心して続けられる施術を見つけることが、より良い眠りへの近道になるでしょう。

さとちゃん

肩こりや腰痛だけではなく、加えて睡眠や精神的な不調に悩んだときは、ぜひ鍼灸も治療の選択肢として考えてみませんか?

この記事でわかったこと

  • 鍼灸で血流や筋緊張を整え、寝つきや熟睡感を改善
  • 未病段階から体の巡りを促し、不調の悪化を防ぐ
  • 症状や体質に合わせた施術で、自分に合う改善法が見つかる

監修:脇 英彰(わき ひであき)

*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)

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