【薬日本堂監修】漢方の基本「養生」とは? 健康を守る暮らし方を専門家が解説

「最近なんとなく疲れが取れない」「体調がすぐれない日が続いている」――そんな悩みを感じることはありませんか?

健康のために何をすればいいのか調べても、現代はさまざまな情報があふれていて、何が正しいのかわからなくなってしまいますよね。

そんな時に、改めて見直したいのが日本古来から確立されてきた漢方養生です。長寿大国である日本で受け継がれてきた漢方養生は、特別なことをするのではなく、自分の体に合わせて無理なく生活を整えるための知恵が詰まっています。

本記事では、薬剤師で薬日本堂漢方スクール講師の飯田勝恵先生から、「漢方養生の基本」について教えていただきました。

日々の健康をサポートする、シンプルで実践しやすい習慣をご紹介します。ご自身に合った漢方養生を今日から取り入れて、心身のバランスを整えていきましょう。

この記事でわかること

  • 漢方養生の基本的な考え方
  • 一日の流れに合わせた養生のポイント
  • 四季ごとの気候変化に応じた養生法
目次

漢方養生の基本理念

漢方養生とは、日々の生活の中で心と身体のバランスを整え、健康を維持するため知恵です。  

食事の摂り方や休息のとり方、感情のコントロール、季節や環境に応じた過ごし方など、無理なく続けられる工夫を続けることが大切とされています。  

古くから伝わる「養生訓」にも記されているように、漢方養生は特別なことをするのではなく、日々の食事や生活習慣の見直しから始められます。

当たり前のような、でも意外と見落としがちな小さな習慣の積み重ねが、心身の健やかさにつながります。

養生の道は他言を必要としない。実行することは、ただ飲食を少なくし、病気を助長するものを食べず、色欲を慎み、精気をもらさず、怒り・哀しみ・憂い・思いなどの感情を激しないことである。
心を平静にして気を和らげ、言葉を少なくして無用のことを言わないで、風・寒・暑・湿の外邪を防ぎ、またときどき身体を動かし、歩行し、だらしなく横になって寝ることをせず、食気の循環をよくすることだ。これが養生の大切な点である。


引用:養生訓

便利すぎる現代だからこそ、求められる漢方養生の知恵

現代の生活は便利になった一方で、不規則な食事やストレス、運動不足など、健康を損なう要因も増えています。

その結果、体調を崩しやすくなり、慢性的な不調を抱える人も少なくありません。

そんな現代だからこそ、改めて注目されているのが漢方養生です。

漢方の世界では、健康は偶然得られるものではなく、日々の積み重ねによって築かれるものと考えます。病気を治すことよりも、日々の習慣を整えて心身のバランスを崩さないようにすることが漢方養生の目的です。

養生とは、自然治癒力を高める健康法

養生は、誰もが本来持っている「自然治癒力」を高め、より良い状態へ導くことを目的としています。

とはいえ、一人ひとりの体質や体調は異なるため、すべての人に共通する健康法があるわけではありません。

例えば、寒がりの人と暑がりの人では気温の感じ方が異なるため、服装や食の好み、生活様式などが変わります。

養生も同じで、体質や年齢、症状だけでなく、季節や住環境、仕事などに合わせて調整することが基本です。現代風に言えば、一人ひとりに最適化されたヘルスケアの知恵が受け継がれているとも言えます。

そして養生は、一度決めたらずっと同じ方法を続けるというわけではありません。健康を維持するには、季節や体調、加齢による変化に応じて、適切な方法を見直すことが大切です。

四季のある日本ならではの養生を取り入れることで、先回りしたセルフケアが可能になります。例えば、春の過ごし方が梅雨や夏の不調を和らげ、秋の養生が冬の風邪予防につながることも。

自然と調和した暮らしが、漢方養生の魅力のひとつです。

まずは養生、次に漢方薬

養生の基本は、心身の状態を整えることにあります。問診を通じて体調を見極め、不調を和らげるための食事、運動、睡眠、心の持ち方など、日々の習慣を見直すことが大切です。

漢方薬は、その上で補助的に活用することで、より無理なく健康を維持しやすくなります。重要なのは、薬に頼る前に、養生を意識して自分自身の体調を整えること。不調は痛みだけでなく、なんとなくの不快感や感情面の不調(メンタルの揺らぎ)も含まれます。

たとえば、十分な休息、偏った食生活の改善、ウォーキングでの運動習慣、リラックスのためのお茶やツボ押しなど、誰でも手軽に取り入れられるセルフケアが多くあります。

日々の生活に養生を取り入れ続けることで、将来の健康を支える土台が築かれていきます。

では、次から具体的な方法を見ていきましょう。

健康を底上げする漢方養生の具体的なやり方

健康を維持するには、日々の生活リズムを整えることが大切です。

特に睡眠は、心身を回復させる重要な時間。しかし、不規則な生活やストレスが続くと睡眠の質が低下し、体調にも影響を及ぼします。

また、食事や運動で身体を整えることも欠かせません。さらに、ストレスの多い現代では心の養生にも意識を向けることが必要です。

睡眠で養生

睡眠は、心身の回復に欠かせない時間。だからこそ、睡眠養生を意識することが大切です。

漢方の世界では、夜は「陰」昼は「陽」と考え、夜にしっかり休息をとることで昼に必要なエネルギーが蓄えられるとされています。

特に、23時から午前1時は「胆(たん)の時間」とされ、胆の新陳代謝が活発になるため、この時間にしっかり眠るのが理想です。すると「血(けつ)」の巡りが整い、身体の回復がスムーズになると考えられています。

また、漢方では目や脳を酷使すると「血(けつ)」が消耗し、不眠につながるとされています。夜はできるだけスマホやPCなどのデジタル機器から離れ、リラックスした時間を過ごしましょう。

さらに、就寝90分前までにぬるめのお湯に浸かるのも効果的です。副交感神経が優位になることで、自然な眠りに入りやすくなります。これは現代医療でも裏付けられており、入浴後の深部体温の低下が寝つきをよくすることがわかっています。

ところで、漢方の「23時までに寝たほうがいい」という考え方と、かつて話題になった「睡眠のゴールデンタイム(夜10時~深夜2時)」は異なる概念です。

以前は、この時間帯に成長ホルモンが分泌されると言われていましたが、現在では「ホルモン分泌のピークは、時間帯に限らず入眠後90分~2時間以内に起こる」とわかっています。

つまり、成長ホルモンの分泌に関して特定の時間帯は関係ありませんが、漢方養生では「胆の時間に寝ることで身体が回復しやすくなる」と考えられているということです。

実際にどちらが自分に合うかは、試してみるのが一番。漢方養生のリズムが心地よく感じるなら、ぜひ23時までに眠る週間を続けてみてください。

食事で養生

漢方では、食べすぎが胃腸に負担をかけて体内の水分バランスを崩し、余分な水分が滞る「水滞」や、血の巡りが悪くなる「瘀血(おけつ)」を引き起こすと考えられています。

そのため、栄養バランスの取れた食事を心がけ、腹八分目を意識して食べ過ぎを防ぐことが大切です。 

特に夜遅くの食事は、胃腸に負担をかけるだけでなく、睡眠の質を下げる要因にもなります。

消化負担を減らすため、夕食はできるだけ軽めにし、かといって炭水化物だけで済ませたりせず、バランスよく食べましょう。

運動で養生

運動は、漢方養生において「気血(きけつ)」の巡りを促し、心身の調和を保つために欠かせない要素とされています。

身体を動かすことで血流が改善され、気(エネルギー)の流れもスムーズになり、不調の予防につながります。

また、適度な運動はイライラなどの感情的なストレスの軽減にも役立ち、心の安定をもたらすと考えられています。

運動不足は血行不良や気の滞りを招き、不眠や冷え、倦怠感などの原因となることがあります。日中に適度な運動を取り入れることで心身のリズムを整え、夜の自然な睡眠を促すことが大切です。

運動習慣がない方は、まずはウォーキングから始めるのがおすすめ。朝や夕方の通勤時間、お買い物に行く時間などを利用し、無理なく続けられるペースで歩くことを習慣化してみてください。

天候が悪い日には、室内でのストレッチや軽い体操を行うだけでも血流の改善に役立ちます。

一方で、いきなりキツい運動を始めても、かえって身体が疲れてしまう場合があるので要注意。自身が「心地よい」と感じられる程度に、少しずつ身体を動かすことを心がけてみましょう。

心の養生

漢方では、心のバランスが崩れると気(エネルギー)の巡りが滞り、不調の原因になると考えられています。

ストレスや不安が続くと、眠りが浅くなったり、胃腸の調子が悪くなったりすることもあります。そのため、心を穏やかに保つことも養生の大切な要素のひとつです。

心の養生のために、日々の生活の中でリラックスする時間を持ちましょう。

好きな音楽を聴いたり、趣味に没頭したり、軽く体を動かしたり、または気心の知れた方とゆっくりお茶をしてリラックスすることで、滞っていた気の流れが整って心に余裕が生まれます。

不調を気にしすぎると、かえって体調を崩しやすくなることもあるため要注意

ある程度、楽観的な考え方を持ち、気長に養生を続ける「ゆるく楽しむ姿勢」で取り組んでみてください。

時間・季節に合わせた因時養生

私たちの身体は、時間や季節の移り変わりに影響を受けながら、自然のリズムに沿って変化しています。

漢方では、この流れに順応することが健康維持のポイントと考えられています。朝と夜、春夏と秋冬、それぞれの時間帯や季節に合った過ごし方を意識することで、心身のバランスを整えることが大切です。

一日の養生

一日の流れは、朝・昼・夕・夜の四つの時間帯に分けられ、それぞれが四季の移り変わりに対応すると考えられています。自然界のリズムに沿って生活することは、心身のバランスを整えるために大切です。

▼自然界のリズム

  • 朝は「春」:新しい一日が始まり、活動をスタートさせる時間
  • 昼は「夏」:エネルギーが最も高まり、活発に動く時間
  • 夕方は「秋」:心身を落ち着かせ、穏やかに整える時間
  • 夜は「冬」:しっかり休息をとり、明日への準備をする時間

このように、一日の養生も四季の流れと同じように、陰陽のリズムに合わせて暮らすことが大切です。活動と休息のバランスを意識しながら、自然のリズムに調和した生活を心がけましょう。

朝の養生

朝は、新しいエネルギーが満ち、心身を穏やかに目覚めさせる大切な時間です。  

まずは太陽の光を浴びながら深呼吸をし、体内に新鮮な陽気を取り入れましょう。窓を開けて空気を入れ替えることで、屋内の気を整えるとともに、すっきりとした気分で一日を始められます。

軽くストレッチをしたり、ウォーキングを取り入れたりすると、血流が促され、目覚めがよりスムーズになります。  また、髪をとかすことも、頭の気の巡りを整える簡単な養生法です。

朝の水分補給は、眠っている間に失われた潤いを補うために欠かせません。特に白湯や温かい飲み物は、胃腸をやさしく温め、消化を助ける働きがあります。  

朝食は、その日の活力を生み出す重要な習慣。体質に合ったものを選びつつ、お粥やスープなど温かく消化の良いものを取り入れてみましょう。胃腸にやさしく、エネルギーを補いやすくなります。

昼の養生

昼は陽のエネルギーが最も高まり、活動に適した時間です。

心身が活発になるこの時間帯を有効に使い、しっかりと動くことで、自然なリズムが整います。  

日中に必要なエネルギーを確保するため、昼食はバランスの良い食事を心がけましょう。消化に負担をかけすぎないよう、腹八分目を意識しながら、栄養をしっかり補うことが大切です。  

また、昼食後には軽い散歩を取り入れると、血流が促され、午後の活動がスムーズになります。15分程度の短い昼寝(パワーナップ)も、心身をリフレッシュさせ、午後の集中力を高めるために効果的です。

夕方の養生

夕方は、陽のエネルギーが落ち着き、陰の時間へと移行する大切なタイミングです。

この時間帯は、心身を穏やかに整え、ゆったりと過ごすことを意識しましょう。  

日中に使ったエネルギーを回復させるために、夕食は早めの時間帯に、軽めの食事をとるのが理想的です。

寝る直前の食事は胃に負担をかけ、睡眠の質を下げる原因にもなるため、できるだけ避けることをおすすめします。

食後に軽い散歩を取り入れると、消化が促進され、リラックスしやすくなります。寝る前には歯を磨き、リラックスする時間を作って、ぐっすり眠るための準備をしましょう。

夜の養生

夜は陰のエネルギーが最も深まり、心身が休息へと向かう大切な時間です。

この時間帯にしっかりと睡眠をとることで、翌日の活力を養うことができます。  

眠る時間は季節によって多少異なりますが、遅くとも午前0時までには就寝するのが理想です。夜更かしを続けると、体の修復に必要なエネルギーが不足し、疲れが抜けにくくなります。  

特に、寝る直前までスマホやパソコンの画面を見続けると、目や脳が刺激され、眠りが浅くなる原因になります。

就寝前は読書や軽いストレッチなどを取り入れ、リラックスする時間をつくってみてください。

四季の養生

私たちの身体は、季節の移り変わりとともに変化しています。

春には活動が活発になり、夏はエネルギーを発散しやすくなります。秋は乾燥しやすく、冬は寒さで体が縮こまりがちです。そのため、それぞれの季節に合った養生を取り入れることが、健康を維持するうえで大切です。

季節養生のポイント
(気が巡る季節)・軽い運動で血流を促し、気の巡りを良くする
・旬の野菜を取り入れ、冬に溜まった老廃物を排出する
(陽の気が最も強い)・こまめな水分補給を心がけ、汗で失われた水分を補う
・冷たいものの摂りすぎに注意し、胃腸を冷やさないようにする
(乾燥が気になる季節)・喉や肌の乾燥を防ぐため、白ごまや梨、れんこんなど潤いを補う食材を摂る
・深呼吸や軽いストレッチで自律神経を整える
(エネルギーを蓄える季節)・体を温める食材(生姜、ねぎ)を積極的に摂る
・早寝を心がけ、十分な休息をとることで免疫力を高める

このように、四季の流れに沿った生活を意識することで、心身のバランスを保ちやすくなります。食事や生活リズムを季節に合わせて調整し、季節に応じた養生で常に健康を保ちましょう!

まとめ:漢方養生で、未来まで続く健康の土台を築こう

漢方養生とは、自然と調和しながら心身のバランスを整え、健康を維持するための健康法。つまり個人に合わせたパーソナルなセルフケアです。

朝は新しいエネルギーを取り入れ、日中は積極的に活動し、夜はしっかりと休息を取ります。さらに、季節の変化に合わせて食事や生活習慣を調整することで、自然のリズムに沿った健康的な暮らしが実現します。

漢方養生は一人ひとりに合った方法で、無理なく続けることが大切です。毎日の小さな心掛けが、未来の健康に大きな影響を与えます。

今日からできることを実践し、養生の力で、より健やかな日々を手に入れましょう。

この記事でわかったこと

  • 養生は特別な方法ではなく、日々の生活を整えることが大切
  • 朝は活動の準備をし、夜はしっかり休むことで体のリズムが整う
  • 季節に応じた食事や生活の工夫が、体調を維持するカギになる

関連書籍

漢方について、もっと詳しく知りたくなりましたか?本記事を監修している飯田勝恵先生の著書「やさしい漢方 未病の地図帖 不調の原因とセルフケアがよくわかる」もチェックしてみてくださいね。

▼参考書籍

【書籍情報】
タイトル:やさしい漢方 未病の地図帖 不調の原因とセルフケアがよくわかる
著者名:飯田勝恵(著)薬日本堂(監修)
出版社:家の光協会
形態:単行本 / kindle版/楽天kobo版

発売日:2024年2月17日

監修:飯田 勝恵(いいだ かつえ)

こちらに飯田先生のプロフィールカードを掲載します。

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