夜になると、寂しさが襲ってくる。
SNSを見ると周りが輝いて見えて、自分だけが社会から取り残されているように感じる。
そんな孤独感から眠れなくなって、毎日なんとなく疲れてだるい……そんな悩みはありませんか?
睡眠は心と身体の健康に深く関わっており、特に近年では「孤独感」との関係性にも注目が集まっています。
今回は、東京家政大学人文学部心理カウンセリング学科教授である岡島義先生に、睡眠と孤独感の関係、そしてその対処法についてお話を伺いました。
この記事でわかること
- 孤独感と不眠は、どのように関係しているのか
- 孤独感と不眠を改善する認知行動療法(CBT-I)とは
- 今日からできる、孤独感や不眠改善につながるセルフケア
孤独感と不眠は負の相関関係にある
これまで、孤独感と睡眠の関連性は注目されてきましたが、研究はあまり進んでいませんでした。岡島先生は「孤独感」と睡眠の深い関係性について、新たな知見を得るための研究も進めていらっしゃいます。
実際に、先生がある研究チームと3年間のコホート調査を行ったところ、不眠が慢性化しやすいのと同じように、強い孤独感もまた慢性化しやすいことがわかってきたそうです 。
さらに、「不眠が悪化すると孤独感が増す」、あるいは「孤独感が増すと眠れなくなる」といった相互に影響し合う関係性があることも明らかになりました。このことから、不眠と孤独感は密接に連動していると考えられます。

不眠と孤独感の連鎖が心身に与える影響と、睡眠改善が拓く希望の道
この研究では、「孤独感」と「社会的孤立」は、区別して考えられています。
- 孤独感:周りに多くの人がいるにもかかわらず、自分は一人だと感じる主観的な感情
- 社会的孤立:物理的に誰からもサポートを得られない客観的な状態
具体的には、「社会的孤立」は周囲に人がいない状態を指し、福祉的な支援が必要にな状態です。一方、孤独感は「人に囲まれていても一人ぼっちだと感じる」主観的な感覚で、カウンセリングのような心理的サポートが求められます。
岡島先生の研究からも、この二つが組み合わさることで、心の健康がより脆弱になる可能性があり専門的なサポートが重要であることが示唆されています。
さらに、不眠状態に孤独感が加わると、心身への負担がより大きくなり自殺率が高まる傾向が確認され、より一層の注意とケアが必要となる危険性があると考えられます。
特に若い世代では、睡眠が悪化することで孤独感が深まり、心の健康に深刻な影響を及ぼすケースもみられます。こうした状況にある方、または周囲にそのような方がいる場合は、早期の丁寧なケアが不可欠です。
孤独感や社会的な孤立は一人だけで改善することが難しいケースが多いですが、睡眠改善は、その負の連鎖を断ち切るための重要な第一歩となり得ます。
不眠を改善するための治療や活動をきっかけに、カウンセリングなどを通して専門家と繋がり、心の状態が安定することで、自然と人との接点を増やす機会が生まれることも期待できます。

睡眠と孤独感の連鎖を断ち切る「認知行動療法」とは
不眠と孤独感の悪循環を止めるには、まず不眠の根本的な原因に目を向ける必要があります。不眠の背景には、睡眠を妨げる習慣や思考パターンが潜んでいることが多いからです。
そこで効果的な睡眠改善アプローチが「認知行動療法(CBT-I)」です。この治療法が、不眠の習慣や考え方をどのように修正していくのか、具体的に見ていきましょう。
不眠の悩みは性格のせいではない
不眠に対する認知行動療法(CBT-I)を実施するときに大切なのが、「眠れないことを性格のせいにしない」という考え方です。
「自分がダメだから眠れないんだ」と自分の性格を責めてしまうと、状況はなかなか変わりません。認知行動療法では、不眠の原因を「これまでの習慣」と捉え、それを変えていくことに焦点を当てます。
この「習慣」には、行動だけでなく、以下のような要素も含まれます。
- 考え方の癖:寝る前に「今日は眠れるだろうか」と心配する
- 感情の癖:眠ろうとすると焦りや不安を感じてしまう
- 身体の癖:眠ることを意識すると体がドキドキする など
認知行動療法は、これらの習慣を一つひとつ見直し、改善していくプロセスです。
最終的には、自転車の乗り方のように、自分で睡眠をコントロールできるようになることを目指します。一生医師に頼り続ける必要はなく、自分の力でぐっすり眠れるように導いてくれる――それがCBT-Iの大きな魅力です。
不眠にとらわれる、そんな考え方を変えていくことがポイント
不眠に悩むとき、どうしても視野が狭くなりがちです。
「今夜こそ絶対に眠らないと」と自分を追い込み、眠れないままベッドで孤独感に沈んでしまう──その繰り返しでますます心と体がこわばってしまいます。
認知行動療法では、「眠れない夜があっても大丈夫」「眠ることも、眠らないことも選択肢のひとつ」という考え方に視点を切り替え、まず心の余白を取り戻していきます。
「眠れない」と感じているところから、「案外眠れるかもしれない」という柔らかな可能性に気づけば、孤独感と不眠のループは少しずつゆるみはじめるはずです。
孤独感へのアプローチ:日中の「生きがい」が鍵
夜に眠れるようになっても、孤独感の連鎖が完全に断ち切れるとは限りません。孤独感は、日中の過ごし方や心のあり方と深く結びついているためです。

「どんなふうに生きたいのか」を明確にし、生きがいを見つけることが大切
不眠には認知行動療法(CBT-I)が有効とされていますが、孤独感への認知行動療法の応用については、現在も研究が進められている段階です。岡島先生も、孤独感の予防効果に関する研究に取り組んでいらっしゃいます 。
最近注目されているのは、夜ではなく日中の孤独感にどうアプローチするかという視点です。
孤独感は「心理的柔軟性」や「ウェルビーイング(幸福感)」と反対に働く傾向があり、幸福感が乏しいほど孤独感を深めやすくなると考えられています。
そのため、日中に「自分は何をしたいのか」「どんなふうに生きたいのか」を明確にし、具体的な行動へつなげることが大切です。
たとえ孤独感が残っていても、「私はこれに取り組む」という目的意識がはっきりしていれば、心を立て直しやすくなります。
「推し活」が心の栄養に:趣味の好きなことが快眠を育む理由
幸福感につながる場合、「推し活」も孤独感に悩んでいる方におすすめしたい活動です。
推し活によって、自分がどんなことを楽しんで人生を進めたいのかをはっきりさせ、その目標に向かって行動できるようになるきっかけとなり、自然と心や生活に張りが生まれてきます。
孤独感に苦しむ方の中には、「自分なんて……」と消極的な感情を抱えるケースが少なくありません。そうした方々に共通しているのは、日々を支える“生きがい”が見当たらないことです。
最近の「好きなアイドルやキャラクターを応援する“推し活”」も、立派な生きがいのひとつです。

好きになること、好きなことを楽しむという心の栄養が、快眠を育んでいきます。
自分にとって素敵な価値を見つけ、それを大切に育てるプロセスが、孤独感から抜け出す大きな手がかりになるでしょう。
まとめ:孤独感と不眠の悪循環をほどくために
孤独感と不眠は互いに影響し合い、放っておくと心身のバランスを崩す深刻な連鎖を生み出します。
孤独感が強まれば眠りは浅くなり、眠れない夜が続けば孤独感はさらに深まる――その悪循環を断ち切る鍵は、夜だけでなく日中の過ごし方にまで目を向けることです。
まずは認知行動療法(CBT-I)で「眠れないのは性格のせいではない」と捉え直し、睡眠を妨げる習慣や考え方を少しずつ修正していくのが効果的。
同時に、日中に自分が大切にしたい価値を探し、「これをやってみたい」と感じられる行動を取り入れてみてください。推し活や趣味の時間、好きなことの鑑賞でもかまいません。
自分なりの生きがいを育てることで、孤独感は和らぎ、夜の眠りも穏やかになります。
もし今、孤独感や不眠に悩んでいるなら、今日できる小さな一歩から――自身の生きがいになるようなものを見つけ、心地よい毎日を取り戻せるように工夫してみてください!
この記事でわかったこと
- 不眠が悪化すると孤独感が増し、孤独感が増すと眠れなくなる
- CBT-Iでは、不眠と孤独感の原因となる思考や行動を少しずつほぐして視野を広げていく
- 自身が幸せになれる物事や生きがいを見つけると心を立て直しやすくなる
関連書籍
認知行動療法(CBT-I)について、もっと詳しく知りたくなりましたか?
本記事を監修している岡島義先生が解説を担当し、実際の認知行動療法の指導者としてキャラクターとして登場されている書籍「ぼくは不眠症。眠れる夜を迎えるまでの20年」もチェックしてみてくださいね。
▼参考書籍

【書籍情報】
タイトル:ぼくは不眠症。眠れる夜を迎えるまでの20年
著者名:土井 貴仁 著、寺島 ヒロ 絵、岡島 義 解説
出版社:合同出版
形態:単行本
発売日:2023/10/20
監修:岡島 義(おかじま いさ)
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)









