年齢を重ねるにつれ、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めてしまったりと、これまでとは違う睡眠の変化を感じていませんか。
これは、女性の身体が新しいステージへ向かう過程でよく見られる変化のひとつです。特に40~50代の女性は、女性ホルモンの変化によって心や身体のゆらぎがあり、その影響が睡眠に表れやすくなることがあります。
そこで今回は、産婦人科医であり心療内科医の小野陽子先生に、更年期に見られやすい睡眠の変化や、日常生活の中で心と身体をととのえるコツを伺いました。
無理をしなくても続けられる簡単なセルフケアもご紹介していますので、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
この記事でわかること
- 更年期の基本
- 女性ホルモンのゆらぎだけではない、更年期の不調を強める背景
- 力を抜いて取り組める、更年期世代向けの睡眠ケアの実践ポイント
大人の女性なら誰もが経験する「更年期」とは?
女性が年齢を重ね、身体が次のステージへ向かう時期には、さまざまな変化が重なります。まずは、「更年期」という言葉が指す意味を正しく理解し、心身の揺らぎとうまく付き合うための基本を整理していきましょう。
更年期は「期間」を指す言葉
「更年期」とは、閉経の前後5年間、合計10年間の期間を指します。
日本人女性の平均閉経年齢は約50.5歳といわれており、一般的には45歳頃から55歳頃までが更年期にあたります。これは、誰もが通過する身体の移行期であり、この期間そのものを示す言葉です。
閉経は「最後の月経から1年間、月経がこない状態」で確定します。例えば48歳で月経が止まり、49歳の時点で1年間続いていれば、その時点で「48歳で閉経した」とわかります。
そのため、「あの頃感じていた不調は更年期だったんだ」と、後になって気づく方も少なくありません。

更年期の不調は心と身体にあらわれるサイン
「更年期障害」と呼ばれるものは、更年期にあらわれる心身の不調のことを指します。
身体の症状としては、ホットフラッシュ(ほてり)、発汗、首や肩のこわばりなど。心の症状としては、イライラ、気分の落ち込み、そして睡眠の質の低下などが挙げられます。
特に更年期の前半(閉経前)は、月経周期が乱れ始め、ホルモンの変動も大きくなる時期です。「なんとなくしんどい」「病院に行くほどではないけれど調子が整わない」といった、言葉にしづらい違和感を抱えやすくなります。

その不調、女性ホルモンのゆらぎだけが理由ではないことも
更年期の不調というと、「女性ホルモンが減るから」と考える方が多いかもしれません。
確かに、女性ホルモンの変化は大きな要因です。しかし、それだけで心や身体の状態を説明できるわけではありません。
更年期の時期は、身体の変化にくわえて、これまでの経験や日々の生活環境が影響することがあります。さまざまな要素が複雑に重なり合うことで、不調を感じやすくなってしまうのです。
心と身体のゆらぎを強める背景要因
女性ホルモンのゆらぎ以外に、更年期症状に影響を与えるとされる要因の例を見てみましょう。
| 要因の種類 | どのようなことが影響しやすいか |
|---|---|
| これまでの心身の傾向 | 若い頃に月経前症候群(PMS)や産後の抑うつ状態を経験した場合、心の揺らぎが出やすくなることがあります |
| 生活習慣 | 喫煙や運動不足などの習慣は、心身の負担につながり、不調を強める一因となることがあります |
| 日常生活のストレス | 子育て、介護、仕事の責任など、この時期特有の環境変化が重なり、心のストレスになりやすいことがあります |
このように、体質やライフスタイルなど多様な要因が影響し、更年期の不調を強めてしまうことがあるのです。

ストレスが身体に現れる「心身症」という視点
更年期の不調を考えるときに、見逃せないのがストレスの影響です。
ストレスが続くと、心だけではなく身体の症状としてあらわれることがあり、このような状態で起こる病気を総称して「心身症」と呼びます。もともと身体にある不調が強まったり、新たな症状として出てきたりと、身体のサインとして表れる点が特徴です。
ここで知っておきたいのは、「心身症」と「うつ病」は異なるものだという点です。心身症はストレスの影響が“身体の不調”として現れやすいのに対し、うつ病は“気分の落ち込みや意欲の低下”といった心の症状が中心になります。
更年期にストレスが多く、調子が整いにくいと感じるときは、身体からのSOSサインかもしれません。「こんなことで病院へ行っていいの?」と迷うことがあるかもしれませんが、他の病気が隠れている可能性もあるので、違和感を感じたら医療機関を受診してみてください。

私たちの日常にひそむ小さなストレス:デイリーハッスルズ
ストレスというと、転職や離婚、親の介護といった大きな出来事をイメージしがちです。
けれど実際には、毎日の暮らしの中にある小さなイライラが積み重なることで、心にも身体にも負担がかかり、睡眠を妨げる要因になることがあります。こうした日常の些細なストレスは「デイリーハッスルズ」といいます。
- 洗濯機の中に裏返しの靴下が入っている
- シンクに汚れたお皿がそのまま置かれている
- トイレの便座が上がったままになっている
- 「今日のご飯は?」と何気なく聞かれた一言が負担に感じる
どれも大きな出来事ではないかもしれません。
それでも、こうした小さなストレスが毎日のように積み重なると、「どうして私ばかり」「気づいてくれたらいいのに」といった不満が少しずつたまっていき、自律神経やホルモンバランスに影響することもあるのです。
「こんなことでイライラするなんて……」と、自分を責める必要はありません。
まずは「今、この状況にストレスを感じているんだな」と気持ちを認めてあげましょう。そうやって心の負担を少しで少しでも軽くすることが、日々の些細なストレスとうまく付き合っていくための大切な一歩になります。

更年期世代が意識したい、60点で続ける快眠セルフケア
更年期は、睡眠も乱れやすくなります。
快眠のために、寝具を買い替えたり、サプリメントを取り入れたり、生活習慣の改善に取り組んだりと、さまざまな工夫をしているかもしれません。
けれど、大人世代もこそ知ってもらいたいことがあります。それは、快眠のために「完璧を目指す」のをやめることです。
若い頃の睡眠を目指して「完璧じゃない」と悩むことも多いのですが、そもそも年齢とともにカラダも睡眠の質も変わっていくのは一般的な加齢による変化です。ある程度の睡眠変化は受け入れてみましょう。
つまりご自身の中で「60点が取れればOK」とゆるやかな目標を持ち、五感が心地よいと感じる小さな習慣を続けていくことが、快眠を維持するためにとても大切です。
ナイトルーティンをつくって、脳に睡眠のスイッチを入れる
快眠のためにおすすめしたいのが、ナイトルーティンをつくること。
ナイトルーティンというと、キラキラとしたインフルエンサーがおしゃれな生活を送っているイメージがあるかもしれませんが、特別なことをする必要は全くありません。
ご自身にとって「これをすると気持ちが落ち着く」「緊張がゆるんで心が安らぐ」と感じられる小さな習慣を、1つでもいいので毎晩行ってみてください。読書をする、ペットと触れ合う、家族と会話するなど……心が穏やかになれることを、習慣として行ってみましょう。
何をやったらいいのか分からないと思った方は、自身の「五感」に注目してみてください。いい香りや、心地よい手触り、心安らぐ音など、五感が心地よくなることに取り組んでみるのがポイントです。
| 感覚 | 心地よい刺激の例 |
|---|---|
| 嗅覚 | 好きな香りのアロマを枕元で楽しむ |
| 触覚 | 柔らかな質感のパジャマや寝具に包まれる |
| 聴覚 | 静かな音楽や雨音などの環境音を流す |
| 味覚 | ノンカフェインのハーブティーをゆっくり味わう |


ベッドは「夜に休むためだけの場所」にしていく
自宅でひとりの時間を過ごすとき、ついベッドの上で動画を見たり、漫画を読んだり、SNSをチェックしたりしてしまうことはありませんか?
一見するとリラックスできそうですが、こうした習慣が続くと、脳が「ベッド=起きて活動する場所」と覚えてしまいます。すると、いざ就寝時間になっても、眠るモードに切り替わりにくくなってしまうのです。
ベッドは、夜は眠るためだけに使う。そんなシンプルなルールを積み重ねていくことで、「ベッドに横たわったら眠る時間」と脳が認識し、自然に眠気を感じ取りやすくなります。

完璧を手放すと、睡眠はぐっと整いやすくなる
ぐっすり眠りたいなら、完璧主義を手放すことが近道です。
真面目な方ほど「7時間以上眠らなきゃ」「夜中に目が覚めたら失敗」など高い基準を設けて、できない自身をダメ出ししてしまう傾向にあります。けれど、そんな完璧主義を貫きすぎると、それすらストレスになって睡眠に悪影響をおよぼすことがあるのです。
大人の女性にとって、思うように眠れない日があるのは自然なこと。うまく眠れないこともあることを理解して、「60点が取れればOK」と目標値をゆるめてみましょう。
「夜中に目が覚めたけど、横になって休めたからOK」
「5時間眠れたなら上出来」
そんなふうに、少しゆるく考えるようにしてみてください。肩の力を抜いて、少し楽観的になるほうが緊張がほどけ、結果的に睡眠の質が上向くこともよくあります。
うまくいかない日があっても、「まあ今日はこれでよし」と一度手放してみる。その柔らかさこそが、揺らぎやすい時期の心身を支えてくれます。


まとめ:更年期のゆらぎを理解し、ゆるやかなケアを始めよう
更年期は、心も身体もこれまでとは違うゆらぎを感じやすくなります。
ホルモンの変化だけでなく、これまでの経験や日々の小さなストレス、環境の変化など、さまざまな要素が重なって不調が生まれる時期です。
眠れない夜が続いたり、気持ちの浮き沈みが強くなったりするのは、あなたが弱いからではありません。むしろ、身体が新しいステージへ向かう途中にあるサインともいえます。
だからこそ、完璧に整えようと無理をするのではなく、「今日はこれで十分」とゆるやかに向き合う姿勢を大切にしてみてください。
五感に心地よさを届けるナイトルーティンや、ベッドを休息の場所として守る工夫、そして100点ではなく60点を目指す、大人のおおらかさ。どれも大きな行動ではなく、日常の中で続けていける小さな習慣です。
ゆらぎやすいこの時期こそ、自身に優しく、できることを少しずつ積み重ねてみませんか。
そのひとつひとつが、あなたの睡眠と毎日をやわらかく支える力になっていくはずです。
この記事でわかったこと
- 更年期の不調は不調は複数の要因が重なって生じることが多い
- 小さなストレスや生活環境の変化が、心身のゆらぎを強めることもある
- 睡眠を整えるために五感の心地よさを意識、完璧はめざさなくていい
監修:小野 陽子(おの ようこ)
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)









