不規則な生活を強いられるシフトワーク、疲労感や心身の不調を感じませんか?または、シフトワークを続ける従業員の不調に悩む経営層・人事の方も多いのではないでしょうか。
生活リズムが乱れがちなシフトワーカーは、睡眠不足やホルモンバランスの乱れを引き起こしやすく、肥満や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。さらに、深夜の食事や間食も体調不良の原因となるため、健康を保つためには工夫が必要です。
そこで今回は、広島大学特命教授・早稲田大学名誉教授である柴田重信先生に「シフトワーカーが抱える健康リスク」について、わかりやすく教えていただきました。
さらに、実践しやすい「食事時間の管理」や「睡眠時間の確保」といった具体的な解決策をご紹介します。シフトワークや夜勤を続けながらも、健康的な生活を送るためのヒントを見つけてみてください。
この記事でわかること
- シフトワーカーが抱える健康リスク
- 時間栄養学を活用した「10時間ダイエット」のメリット
- 夜勤中や深夜の食事が健康に与える影響
- 食事時間の管理と睡眠時間の確保による健康改善法
- シフトワークでも実践できる具体的な食生活の工夫
シフトワークがもたらす、健康リスクがある
医療や介護、警察、サービス業など、多くの業界でシフトワークが採用されています。8時間ずつ勤務時間を後ろにずらすサイクルや、日勤と夜勤を1週間おきに繰り返すサイクルなど、シフトワークといっても働き方は業種によってさまざまです。
しかし、人間の体内時計は1日に2~3時間程度しか調整できません。多くのシフトワークにあるような、大きな時間変動に対応することは1日では難しく、結果としてシフトワーカーは常に「時差ボケ」のような状態になり、体調不良を抱えがちなことが社会的な課題となっています。

シフトワークを続けると肥満やうつ病、乳がんなどのリスクが高まる
シフトワークは、健康にさまざまなリスクを及ぼす働き方の一つです。
長期間にわたりシフトワークを続けると、体内時計に大きな負荷がかかり、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。実際に、看護師や工場勤務者を対象とした疫学調査では、シフトワークの従事期間が長いほどメタボリックシンドロームやうつ病、乳がん、前立腺がん、大腸がんの発症リスクが高くなるというデータが報告されています。
この背景には、シフトワークによる生活リズムの乱れが大きく関係しています。勤務時間の変化に伴い、食事や睡眠のタイミングがずれることで、どうしても不眠や生活習慣病を引き起こしやすくなるのです。
体内時計は急激に変えることができないため、シフトのスケジュールに完全に合わせることは難しいのが現実です。光の刺激などを活用することで位相をわずかに調整することは可能ですが、適応するまでに時間がかかります。
参考:厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド 2023「交代勤務と健康リスク」より
抜粋>厚生労働省の労働者健康状況調査によると、日本の労働者のうち、交替制勤務者は10~20%弱を占め、特に製造業において 高いといわれています。交替制勤務は不眠や眠気、睡眠休養感の低下などの睡眠に関連する症状の 発症とともに、仕事効率の低下や勤務中や通勤中の 事故や怪我などとの関連が報告されています。交替制勤務に従事していない人と比較して、従事者では メタボリックシンドロームの発症リスクが1.06倍、 心血管系疾患の発症リスクが1.15倍増加することが 報告されています。
さらに乳がんや前⽴腺がんなどの悪性腫瘍、うつ病、認知症の発症リスクが 高くなるという報告もあります。
もともと「夜型」の人ならシフトワーク適正が高い
シフトワークへの適応性は、個々の体内時計によって大きく異なりますが、「夜型」の人はシフトワークに比較的適正があるとされています。
その理由は、夜型の人は体内時計が後退しやすく、日中の活動リズムに縛られにくいからです。夜型の人は夜勤や遅番のシフトに適応しやすく、生活リズムを整えやすい特徴があります。
一方で「朝型」の人は、体内時計が規則的な生活を好むため、シフトワークにストレスを感じやすい傾向にあります。早番のみのシフトで働く場合は比較的適応しやすいですが、遅番や夜勤が混在するシフトでは、体内時計が乱れやすく、疲労や健康への影響が出やすくなります。
シフトワーカーが健康を保つための食事法を試そう!
シフトワークを続けると、体内時計の乱れによってメタボリックシンドロームのリスクが高まります。食事のタイミングや内容が不規則になり、高カロリーなものを選びがちになることが主な要因です。
食事時間を「10時間」に限定する(10時間ダイエット)
食生活が乱れがちなシフトワーカーは、食事時間を「10時間」に限定してみましょう。
一般的には10時間ダイエットといわれており、1日の食事を10時間以内に収めることで、過食を防ぐ食事法です。ダラダラ食べるのをやめることで、結果的に摂取カロリーが抑えられ、血糖値や体重の改善が期待できます。
朝食をスタートとすると、その10時間後が食事終了の時間です。シフトワーカーの場合、起床してから勤務開始までに時間に食べる食事を朝食とし、その10時間後までに1日の食事を終えます。18時に勤務開始するシフトワーカーが、17時半に朝食を食べたら、夕食は翌早朝の3時半までに食事を済ませましょう。

ただし、深夜の時間帯に高カロリーの食事を食べたり、アルコールや脂っこいおつまみを楽しんだりするのは、体重増加や健康リスクを高める原因となるため要注意。
シフトワーカーは寝不足などの影響でいつの間にか高カロリーの食事を選びがちになるので、意識的に野菜やサラダなど、カロリーを抑えつつ満腹感が得られるメニューを取り入れてみてください。
アメリカの研究で、シフトワークがある消防士さんを対象に10時間ダイエットを行ったところ、特にメタボ予備軍の人の心血管系マーカーやHbA1c(糖尿病を調べるための血液検査結果)が改善し、効果的であったという論文があります。
参考:24時間シフト勤務者における時間制限食の実現可能性と心臓代謝の健康への影響: Healthy Heroesランダム化比較試験
Feasibility of time–restricted eating and impacts on cardiometabolic health in 24-h shift workers: The Healthy Heroes randomized control trial.
夜勤中の「ランチ」にあたる食事は少なめに
夜勤時の「ランチ」にあたる食事は、できれば控えめにするのがおすすめです。
例えば18時に勤務を開始する場合、夜勤時の「ランチ」にあたる時間は22~23時頃になります。この時間は、昼間活動している人にとっては就寝時間にあたり、普通は食事をとらない時間帯です。シフトワーカーでも、根底にある体内時計は体質の影響を強く受けるため、深夜の食事は消化や代謝に負担がかかるのです。
そもそも、普段は食事をとらない時間なので、お昼休憩の時間になってもあまりお腹が空かない場合もあります。もし、あまりお腹が空いていないなら、無理に食べる必要はありません。
「働くために、エネルギーをつけなければ」と頑張って食事をとる方も多いのですが、お腹が空いていないなら食べなくても大丈夫なケースがほとんどです。夜中でも空腹を感じたら、こってりとした食事はできるだけ避け、野菜やタンパク質を中心としたヘルシーな食事をとりましょう。お腹に消化負担がかからないように、カロリー補給よりも、栄養を補う意識でメニューを選ぶことがポイントです。

夜勤明けの「夕食」にあたる食事もヘルシーなものを選ぼう
夜勤明けの「夕食」にあたる食事も、野菜を中心としたヘルシーなメニューを選びましょう。
シフトワーカーは、睡眠不足による食欲の乱れや、夜勤明けの解放感から、つい高カロリーの食事を選びがちです。また、アルコールや脂っこいおつまみで無意識にカロリー過多になっている場合もあります。10時間の範囲内でも、深夜に食べ過ぎるのは不健康です。
マウスを対象にした研究では、食事のタイミングや量が寿命に大きな影響を与えることがわかっています。この研究では、異なる食事パターンで飼育したマウスの寿命の調査が行われました。その結果、食べる量だけでなく、時間や頻度も健康や寿命に関わる重要な要素であることが明らかになったのです。
▼食事タイミングによる寿命の影響(マウスの研究)
- 自由に好きなだけ食べる場合 : 寿命が最も短くなる
- 腹七分目で1日6回食事を与える場合:自由食より良いが、寿命延長効果は限定的
- 腹七分目で活動時間中だけ食事を与える場合:最も寿命が延びる
- 腹七分目で非活動期間中だけ食事を与える場合:食事時間を短縮しても、寿命延長の効果は薄れる
好きなだけ食べさせたマウスは、最も寿命が短くなりました。一方で、活動時間(12時間)に限定して食事を与えたマウスは、最も寿命が長くなりました。興味深いのは、食事時間を12時間に限定した場合でも、与える時間が非活動期(夜間)だったマウスは、寿命延長効果が薄れたということです。
同じ食事内容でも、昼間に食べるよりも夜中に食べる方が太りやすく、健康リスクを高めます。これは、食事時間を「10時間以内」に限定している人の研究も同様に遅い時間帯に食べては、減量効果や糖尿病予防効果が弱くなります。
もちろん、夜勤中~夜勤明けにダラダラと食べ続けるくらいなら、夜中でも食事時間を限定して食べていた方が健康的です。しかし、体重管理や健康維持のためには、夜中の食事はできるだけヘルシーなものにすることをおすすめします。
参考:
◉Circadian alignment of early onset caloric restriction promotes longevity in male C57BL/6J mice.
◉Time-restricted eating: Watching the clock to treat obesity.
食事記録(レコーディングダイエット)もおすすめ
シフトワーカーの健康法として、食事記録をつけるのも効果的です。
食事記録をつけることで、自身が「いつ」「何を」「どれだけ食べたか」可視化でき、無意識の過食に気づくことができます。また、記録することで「今日は食べ過ぎた」「これ以上食べない方が良いかも」という気持ちになるので、意識的に過食を抑えられるのもポイントです。
食事記録は、レコーディングダイエットというダイエット法として確立されています。しかし、ダイエットが必要ない方でも、食事記録は自身の食習慣や栄養バランスを知るために有益な方法です。
記録をすることで食事内容の選択に、自然と意識が行きますし、記録した食事をときどき見返すことで、不足した栄養や塩分のとりすぎなどが明らかになり、より健康的な食事改善につながります。
生活が不規則で忙しいシフトワーカーなら、食事管理アプリを活用するのもおすすめです。
アプリなら時間がないときでも素早く記録でき、カロリー計算や栄養バランスの管理も簡単にできます。健康や体型が気になっている方は、ぜひ食事管理アプリを試してみてください。

おすすめのアプリ「あすけん」
すでに1100万人以上の利用者がいる「あすけん」はご存知でしょうか?
食事の写真を撮るだけでカロリーに加え、栄養成分まで計算してくれます。アプリには管理栄養士キャラクターの未来(みき)さんが食事記録に応じた具体的なアドバイスをしてくれます。
またGoogle Fitbit、Apple のヘルスケアなどのウェアラブル活動量計(スマートウォッチ)と連携することで日常の活動量と摂取カロリーのバランスを自動計算してくれるので、ご自身の消費量にあった食べるべきメニューを簡単に把握することができます。

柴田重信先生のコメント
「あすけん」は多くの方が愛用する食事記録アプリです。利用方法も簡単で写真や簡単な入力で食事登録ができて、栄養素まで細かに分析ができてとても役立つアプリです。
1回だけ記録する食事記録法や食事頻度調査法と異なり、どんな時間にどれくらいの栄養を取っているのか2週間も記録していくと、日々の食事内容のみならず食事時間のばらつきや平日・休日での自分の食事傾向が把握できます。
時間栄養学も含めた具体的なアドバイスももらえるので、試してみる価値あり!
ホームページ https://www.asken.jp/
何となく食べていた食事が、どのような栄養バランスで、どんな時間帯にとっているのかが明確になります。
もし、シフトワークで不調を感じている方は、記録無精なタイプだったとしても、頑張って一定期間だけでも記録をして、ご自身の栄養バランスを具体的に把握して管理することはとても役立ちます。
シフトワークがもたらす睡眠不足と健康リスクの関係
シフトワーカーは、不規則な生活によって体内時計が乱れるため、睡眠に問題を抱えがちです。
夜勤が終わって、食事を済ませるころには、太陽が昇って朝や昼になっていることも。外が明るく、家族や近隣住民が活動を始める時間帯に眠ろうとしても、なかなかぐっすり眠れないかもしれません。疲れているのに眠れない辛さが続く生活になります。
そんな日々が続いて、睡眠不足に陥ることで、仕事中に脳がぼんやりするだけでなく、肥満や生活習慣病など多くの健康リスクが高まっていきます。
シフトワーク+睡眠不足でメタボが加速する
睡眠時間帯が不規則なシフトワーカーは、睡眠不足に陥りやすいため、自然と太りやすくなってしまいます。
慢性的な睡眠不足は、食欲を抑えるホルモンであるレプチンが減少し、逆に食欲を増進させるホルモンであるグレリンが増加します。その結果、食欲が増大し、過食や体重増加を招きやすくなるのです。このような状態が続くと、糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病のリスクが高まることもわかっています。
また、夜勤後や深夜の食事を手軽に済ませようとして、ついコンビニやファストフードに頼る方も少なくありません。こうした食品は高カロリーで栄養バランスが偏りがちなため、さらに体重増加を加速させてしまう恐れがあります。
さらに、仕事のストレス解消やリラックスのために寝酒を飲む習慣がある方も多く、アルコールや高カロリーなおつまみが余分なカロリー摂取につながります。
このような悪循環を防ぐためには、まずは睡眠時間を確保し、アルコールに頼らなくてもぐっすり眠れるように工夫をすることが大切です。睡眠の問題を改善しつつ、摂取カロリーを抑えることで、生活習慣病や肥満のリスクを減らすことができるでしょう。
睡眠時間を増やして、食べる時間を減らそう
シフトワークや夜間勤務が続くなら、健康改善のためにまずは「睡眠時間をしっかり確保する」ことを意識してみませんか?

十分な睡眠をとることで、身体の疲れがしっかりと回復し、ストレスが軽減され、自然と余計な食欲も抑えられます。食べられない時間を持て余してしまう場合は、次の食事を楽しみに思いながら眠りについてしまいましょう。
ところで、病院の入院生活は、健康的な生活リズムを学ぶ良いモデルです。入院中は、朝8時に朝食をとり、夕食は夜6時までに終えるようになっています。そして、残りの時間はよく眠って身体を休めることが基本です。このように、食事時間を限定して空いた時間を睡眠に充てることで、体内時計が整い、肥満や生活習慣病、睡眠障害などの改善が期待できます。生活リズムの改善は、治療シーンでも活かされているのです。
シフトワークで心身の疲労を感じるなら、まずは睡眠時間を出来る範囲で増やしていき、その上で食事の時間を「10時間以内」に抑えることを目標にしてみましょう。夜勤後の食事は軽めにし、次の勤務に備えて早めに眠ることで、心身ともに回復しやすくなります。
睡眠と食事のリズムを整えることで、健康的な生活を目指していきましょう。
まとめ:賢く食べて、しっかり眠る!健康的にシフトワークを乗り切ろう!
シフトワーカーは、不規則な勤務時間によって体内時計が乱れやすく、睡眠不足や肥満、生活習慣病のリスクが高まるといわれています。
特に、本来眠っている時間帯の深夜の高カロリーな食事や間食は、消化や代謝に負担がかかります。
シフトワーカーの健康リスクを軽減するためには、10時間ダイエットの実践や、食事時間を記録する方法などが効果的です。食事時間を限定し、食べられない時間は諦めて眠ることで、健康的な体重管理と生活リズムの改善が期待できます。
今日からできる小さな工夫で、より良い体調を目指してみましょう。
この記事でわかったこと
- シフトワークは体内時計を乱し、肥満や生活習慣病のリスクを高める
- 夜遅い時間帯の食事は脂肪を蓄積しやすい
- 10時間以内に食事を終える「10時間ダイエット」が健康維持に有効
- 食事時間を限定すると、自然と睡眠時間を確保できる
- 夜勤後は野菜やサラダを取り入れるなど、カロリーを抑える食生活が重要
関連書籍
時間栄養学について、もっと詳しく知りたくなりましたか?本記事を監修している柴田重信先生の「食べる時間でこんなに変わる時間栄養学入門」をチェックしてみてくださいね。
▼参考書籍

【書籍情報】
タイトル:食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門(ブルーバックス)
著者名:柴田重信
出版社:講談社
形態:文庫本 / kindle版/ 楽天kobo版
監修者
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)









