心霊現象じゃない!悪夢と金縛りを経験する人が知っておきたいこと

悪夢と金縛り

「悪夢ばかり見て、眠るのが怖い」「目が覚めたら体が動かない、金縛りだ!」……そんな怖い体験をしたことはありますか?

特に悪夢は、誰もが経験したことのある “睡眠中の恐怖体験” ですよね。強い不安や恐怖を伴うため、睡眠の質が大きく損なわれ、日中の集中力や気分にまで影響を及ぼすこともあります。

今回の記事では、早稲田大学教授で精神科医の西多昌規先生に、悪夢や金縛りの仕組み、治療が必要なケース、そして安心して眠りにつくための対処法について生理学的側面で解説していただきました。

悪夢や金縛りって、カラダはどんな状態なのでしょうか?

この記事でわかること

  • 悪夢が続くときに考えられる原因と、まず自分でできること
  • 金縛りの正体と、起きたときに怖がらずにできる具体的な対処法
  • 悪夢や金縛りが繰り返される場合に注意すべき睡眠障害
目次

恐怖その1:悪夢を見るのが怖くて眠れない

「眠りたいのに、悪夢を見るのが怖くて布団に入るのが不安になる」――そんな経験をしたことはありませんか?

悪夢は、一度きりであれば誰にでも起こるもの。しかし、夜中に何度も目が覚めたり、目覚めた後にまったく眠れなくなったりすることが続くと、心身に大きな負担となります。

悪夢をよく見るのは、どうして?

誰でも一度は「怖い夢で目が覚めてしまった」経験があると思います。

悪夢は、現実に体験した不安や恐怖が反映されることが多く、不審者に追いかけられる、崖から突き落とされる、悪事がばれて責められる――といった内容が代表的です。単なる夢と違い、強い恐怖や不快感を伴うのが特徴です。

悪夢そのものは誰にでも起こるものですが、毎晩のように悪夢が続き、睡眠の質や日常生活に影響する場合は「悪夢障害」という睡眠障害の可能性があります。

悪夢障害に陥ると「また悪夢を見るのではないか」と眠ること自体が怖くなり、日中に強い眠気や集中力の低下を引き起こし、仕事や学業、さらには事故のリスクにもつながります。

悪夢障害と診断されたら、どんな治療をするのか

悪夢があまりにも頻繁に起こり、睡眠や日中の生活に支障をきたす場合には「悪夢障害」と診断され、治療の対象となります。

医師による薬物治療の例

「悪夢障害」の症状が強く、日常生活に深刻な影響が出ている場合には、医師の判断のもとで薬物療法が検討されます。


治療ではレム睡眠を抑制する作用を持つ三環系抗うつ薬などによる薬物療法が適用されます。

悪夢は主にレム睡眠中に出現するため、この段階をコントロールすることで症状の改善が期待できます。このような治療は、睡眠専門医に相談をするようにしましょう。

一方で、医療機関での治療のほか、薬に頼らずに取り組める方法もあります。そのひとつが、アメリカで研究が進んでいる「夢日記」という心理療法です。

簡単にできる対処法「夢日記」の書き方
  1. 見た悪夢の内容を簡単に書き出す
  2. その悪夢を「こう変えたい」という良い内容に書き換える
  3. 書き換えた良夢を10〜15分ほど繰り返しイメージする
  4. 悪夢と良夢の違いをまとめる

このトレーニングを毎日5〜20分続けることで、悪夢の回数を減らす効果が期待できます。

ストレスが夢の内容に反映されることが多いため、書き出すことで自分が抱えている不安や問題に気づける点も大きなメリットです。

ただし、日本では心理士による継続的な支援が少ないため、一人で続けるのはなかなか難しいのが現状です。実際、夢日記をつけ始めたものの、ほとんどの場合は2~3日で挫折してしまうこともだからこそ、完璧を目指す必要はありません。

悪夢に悩む方は、まずは一度「自分の心の整理時間」として、無理のない範囲で試してみてはいかがでしょうか。

もし、夢日記をつけることで気持ちが整理できたと感じたら、それはご自身に合った方法の一つです。悪夢を「心のサイン」としてとらえ、夢日記を上手に活用していきましょう。

眠っているとき、大声を出したり暴れたりする場合は要注意

注意したいのは、悪夢の際の睡眠中に大声を出したり暴れたりといった行動が伴う場合です。

この場合は「悪夢障害」ではなく「レム睡眠行動障害」の可能性がありま

本来、レム睡眠中は夢を見ても暴れて動き出すことはありません。異常な行動は、レム睡眠で夢を見ているときに起こり、夢の内容は悪夢であることがほとんどです。高齢者に多くみられることが多いとされています。

この症状は薬や漢方薬で改善する場合があるため、医療機関への受診をお勧めします。

夢の背景に隠された「心身の声」に耳を傾ける

実際の睡眠クリニックでは、「悪夢障害」だけを理由に、受診されるケースはそれほど多くありません。

悪夢を訴える患者さんの多くは、うつ病やPTSD、あるいは発達障害など、背景に他の精神的な問題を抱えている場合がほとんどです。

例えば、過去にいじめを受けた経験や、人間関係の中で強い生きづらさを感じてきた人が、長期間にわたって悪夢を繰り返すことがあります。こうしたケースでは、単なる「怖い夢」ではなく、心の傷や不安が睡眠に反映されているのです。

そのため、悪夢障害は「悪い夢を見る」という表面的な問題だけではなく、精神疾患や強いストレスの影響と深く結びついていると考えられます。

悪夢に悩むときは「悪夢そのものを消す」ことではなく、生活環境の調整や心理的サポートを通して心身を立て直していくことが治療の中心になります。日中に安心できる体験を積み重ねていくことが、悪夢を和らげる「養生」の第一歩につながります。

PTSDとは?
Post-Traumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)のことで、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態です。PTSDは決して珍しいものではなく、精神医療においては「ありふれた」病気のひとつであると言えます。
出典:こころの情報サイト(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 が作成)

恐怖その2:金縛りにあったときの冷静な対処法

夜中にふと目が覚めたら、体がまったく動かない……、まるで誰かに押さえつけられているような「金縛り」の恐怖を味わったことはありませんか? 

実際のところ、金縛りはそれほど心配な現象ではありません。しかし、繰り返すケースには睡眠の乱れや、稀に病気が隠れていることも考えられます。

金縛りとは? その生理現象の正体を知れば怖くない

「金縛り」とは、寝入りかけや夜中に目が覚めたときに、意識はあるのに体が動かせなくなる現象です。

医学的には金縛りは「睡眠麻痺」と呼ばれています。はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、レム睡眠の乱れが関わっている可能性があると考えられています。

つまり身体は眠っている状態なのに、脳だけが目覚めてしまうことで起こる現象です。

金縛りは約半数が一度は経験、繰り返す人は少数

金縛りは珍しい現象ではなく、一度は経験する人が全体の約半数にのぼるといわれています。

ただし、二度以上繰り返し体験する人は一気に少なくなります。

つまり、多くの場合は一時的に起こるだけで、深刻な病気のサインではないことが多いと考えられるでしょう。

金縛りを経験しやすい人

少数ですが、金縛りを繰り返し経験する場合もあります。

代表的なのがナルコレプシーという睡眠障害です。ナルコレプシーの方は、通常よりも金縛りが起きやすいことが知られており、医療機関での診断と治療が必要です。

また、生活リズムの乱れも金縛りの発生と関係があります特に、夜更かしや昼夜逆転が多い高校生やフリーターの方に比較的多く見られる傾向があります。

もっとも、同じように生活が乱れていてもまったく経験しない人もいれば、頻繁に起こる人もおり、個人差が大きいのが特徴です。女性にやや多い印象があるものの、明確な理由についてはまだ十分に解明されていません。

金縛りが起こったときの対処法|目を動かしてみる

金縛りに遭遇すると、「体が動かない」という恐怖でさらにパニックに陥りがちです。

焦りは禁物。落ち着いて、まずは目だけを意識的に動かしてみましょう

暗い寝室でも、視線を家具やエアコン、カーテンなどに向けてみてください。眼球を大きく動かすことで、なぜか金縛りから抜け出しやすくなることがあります。

眼球運動など、小さな動きに意識を集中させましょう。メカニズムはまだはっきりとわかっていませんが、実践的な方法のひとつとして覚えておくと安心です。

金縛りは「一時的な現象」と知っておくことが大切

金縛りは体が動かなくなるだけでなく、幻覚のような現象を伴うことがあります。

たとえば「誰かに覗かれている」「胸の上に何かが乗っている」といった強い恐怖感を覚える人も少なくありません。そのため、頭では「一時的な現象だ」と理解していても、パニックに陥ってしまうことがあります。

しかし、金縛りは長く続くものではなく、レム睡眠と覚醒のはざまで起こる一時的な現象にすぎません。多くの場合、数分もすれば自然に解けていきます。

「必ず時間が経てば解除される」と知っておくことが、恐怖心をやわらげる助けになります。

まとめ:悪夢も金縛りも「知れば怖くない」

悪夢や金縛りは、多くの人にとって一過性の体験ですが、繰り返し続く場合には睡眠障害や精神的ストレスが背景にあることも少なくありません。

重要なのは、これらを「不思議な現象」や「心霊体験」ととらえるのではなく、生理医学的な視点から理解しておくことです。仕組みを知ることで恐怖は和らぎ、必要なら医療機関での治療や生活リズムの調整によって改善の道もひらけます。

もし眠ることに不安を感じているなら、それは誰にでも起こり得る自然なことで、怖いことではないと落ち着いて対処法を試してみましょう。

それでも、悪夢や金縛りを繰り返して、日中にまで影響が出る日が続く場合は、医療機関に相談してみましょう。

この記事でわかったこと

  • 悪夢障害は薬や夢日記などで改善をめざせる
  • 金縛りは一時的な現象で、目を動かすと抜け出しやすい
  • 頻発する場合は、睡眠障害や精神的ストレスが背景にある

関連書籍

睡眠について、もっと詳しく知りたくなりましたか?

本記事を監修している西多昌規先生が解説に参加している「不眠 睡眠負債・睡眠時無呼吸 不眠症治療の名医が教える最高の治し方 大全」のQ61-61(P103~106)に詳しく解説があるのでぜひ合わせてチェックしてみてくださいね。

▼参考書籍

不眠 睡眠負債・睡眠時無呼吸 不眠症治療の名医が教える最高の治し方大全

【書籍情報】
タイトル:不眠 睡眠負債・睡眠時無呼吸 不眠症治療の名医が教える最高の治し方大全
著者名:西多 昌規
出版社:文響社
形態:単行本
発売日:2021年1月14日

監修:西多 昌規(にしだ まさき)

*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号

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