「頑張って学校に行きたいのに、どうしても朝早く起きられない……」と悩んでいませんか?
早く寝ようとしても、なかなか眠れない。
本当は朝起きたいのに、身体が動かずお布団から出られない。
無理をしても体調が悪くなるばかりで、「サボってる」と思われるのがつらい……
実は、朝起きられないのは、やる気や根性の問題ではなく、身体のメカニズムが関係する「睡眠の病気」の可能性があります。
今回の記事では、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構の神林 崇(かんばやし たかし)教授に、「朝どうしても起きられない本当の理由」について教えてもらいました。
自分でできる対処法や、相談できる病院についてもまとめています。
もし症状が該当するようだと感じたならこの記事とは別に、お父さんやお母さん、先生向けの記事もあります。まわりの大人たちにも知ってもらいながら、一緒に改善していきましょう。
ぜひ、最後まで読んでみてくださいね。
この記事でわかること
- 朝どうしても起きられない理由
- 2つの病気の可能性
- 日常生活の中でできる対処法
- どうしてもつらいときに、どこに相談すればいいの?
朝起きられないのは「甘え」ではない
朝、どうしても起きられない。
そんな日が続くと、親に怒られたり、先生から「サボってるの?」なんて言われてしまうこともあるかもしれません。
でも、それはあなたのやる気が足りないからではなく、身体の中のリズムがうまく働いていないサインかもしれないのです。
実は、こうしたことを大人たちがよく知らないことも、まだまだ多くあります。

眠れない・起きられないのは努力不足ではない
「眠れない」「起きられない」。
それは、やる気が足りないからでも、頑張っていないからでもありません。
10代の身体は、まだ成長の途中で、とてもデリケート。
特に思春期の頃には、夜にうまく眠れなくなったり、朝に目が覚めても身体が動かしにくかったりすることがあります。
これは、体内のリズムが変化していく中で起こる、ごく自然なことなのです。
朝は、体温や血圧が一番低くなりやすい時間帯。
そんなときに無理に起きようとするのは、「真夜中に起きようとする」のと似たような状態です。
そのため、朝起きようとすると頭が痛くなったり、寒気がしたり、気分が悪くなったりすることもあります。
「つい夜更かし」は、脳や神経のリズムが関係している
夜になってもなかなか眠くならず、つい夜ふかししてしまう……。
そんな経験はありませんか?
実は、10代半ばから30代前半くらいまでは、身体のリズムが“夜型”に傾きやすい時期だといわれています。
たとえば、幼稚園のころは「夜9時に寝て朝7時に起きる」という生活をしていても、中学生や高校生になると、「夜12時に寝て朝7時に起きる」といったように、自然と夜型のリズムに変化していくのです。
特に男子は、この傾向が強く出ることが知られています。
こうした変化は、脳や神経の働きによるもので、誰にでも自然に起こることです。
実は、人間だけでなく、動物の世界でも同じようなリズムの変化が見られるんですよ。

一般的には、「若者はスマホで遊んでいるから夜型になる」と思われがちです。
でも実際には、「夜になっても眠くならないから、結果的になんとなくスマホを使ってしまう」という順番のほうが正しいかもしれません。
もちろん、スマホの使いすぎには気をつける必要がありますが、まずは「今の自分の身体が、そういう時期にある」ということを知っておくことも大切です。
「起立性調節障害」「睡眠相後退症候群」という状態の可能性も
朝、どうしても起きられない。
夜は眠れないのに、朝は身体が動かない。
こうした悩みの背景には、「起立性調節障害」や「睡眠相後退症候群」といった身体の不調(病気)が隠れていることもあります。
起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)とは
起立性調節障害は、思春期によく見られる身体の不調です。
立ち上がったときに血圧の調節がうまくいかず、めまいや気分の悪さが出てしまいます。
身体の中にある「自律神経(じりつしんけい)」のバランスが崩れてしまっているのが原因です。
周りの人からは「サボってるのでは?」「気持ちの問題じゃない?」と思われがちですが、自分の気持ちでなんとかできるものではありません。
起立性調節障害になると、どんな症状が出るの?
起立性調節障害の症状をチェックしてみましょう。

こうした症状は、血圧や体温をコントロールしている自律神経がうまく働いていないために起こります。
たとえば、朝に起き上がったとき、普通は自然と血圧が上がって、脳に血が届くようになっています。
でも、この病気になると、その調節がうまくいきません。
そのせいで、立ち上がろうとすると「立ちくらみ」や「強いだるさ」を感じてしまうのです。
学校に行けないほど深刻になることも
起立性調節障害を放っておくと、学校生活にも大きな影響を与えることがあります。
朝起きられずに欠席や遅刻が続くので、勉強が進まず成績が下がったり、友達にいろいろ言われて嫌になって学校に行きづらくなったりするかもしれません。
本当に身体の調子が悪いのに、家族や先生から「また遅刻?」「夜更かししてるんでしょ?」と誤解されてしまうとつらいですよね。なかなか登校できないと、友だちとの関係がギクシャクしてしまう事もあるかもしれません。
でも、早めに気づいて生活を整えたり、医療機関のサポートを受けたりすれば、よくなっていく病気です。
ひとりで悩まず、頼れる大人に相談してみましょう。
起立性調節障害は、どんな検査をするの?
この不調が疑われるときは、血圧や心拍数を調べる検査を行います。
やり方はとてもシンプルで、痛みはありません。
まずはベッドに横になって、安静にした状態で血圧を測ります。
そのあと、ゆっくり起き上がって立ったままの状態で、数分間血圧や脈拍の変化を調べます。
少し時間はかかりますが、身体への負担はほとんどなく、安心して受けられる検査です。
この検査は小児科が得意で、高校生でも診てもらえることが多くあります。
「起き上がるときにくらくらする」など気になることがあれば、無理せず身近な大人に相談してみてくださいね。

▼お父さんやお母さんなど、保護者にむけた解説記事はこちら

睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)とは
「夜になっても、全然眠くならない」
「布団に入っても、どうしても眠くなくって、寝るのが深夜になってしまう」
そんな状態が続くなら、睡眠相後退症候群(すいみそう こうたいしょうこうぐん)かもしれません。
これは、身体の中にある“眠くなる時間のリズム”がどんどん後ろにずれて、寝るのが遅くなっていってしまう症状です。
たとえば、高校生くらいの年代になると、夜11時ごろに寝て朝7時ごろに起きることが多いとされています。
しかし、睡眠のリズムが後ろにずれていくと、深夜3時ごろにようやく眠くなって、お昼ごろまで眠ってしまうんです。
睡眠相後退症候群になると、深夜に寝るのが自然なリズムになってしまうため、夜10時過ぎに布団に入ってもなかなか眠れません。
このように、どうしても夜遅くまで眠れないのは、ただの夜更かしではなく「体内時計の不調」だと考えられるのです。
起立性調節障害と睡眠リズムのずれ、両方が関係していることも
ここまで、「起立性調節障害」と「睡眠相後退症候群」という2つの症状を紹介しました。
実は、この2つの症状が同時に起こることも少なくありません。
なぜなら、血圧と睡眠は、脳の中にある「視床下部(ししょうかぶ)」という、とても小さな場所でコントロールされているから。この部分に不調があると、両方の影響が出てしまうんです。

睡眠不足症候群
さらに知ってもらいたい、もう1つの症候群があります。
それは「睡眠不足症候群(すいみんぶそくしょうこうぐん)」です。
毎日の睡眠時間が短いことで、日中に強い眠気を感じたり、体がだるかったり、集中できなくなったりする状態のことです。
平日は学校のために早起きしなければいけない。
でも夜はなかなか眠れず、十分な睡眠時間がとれない。
すると、朝は眠いけれど無理やり起きて、なんとか学校へ行く。
そんな生活では、気づかないうちにひどい寝不足が続いてしまいます。
そして週末になると、たくさん眠ってその不足を取りもどそうとします。(睡眠負債の返済と呼ばれています)
こんな生活リズムがくり返されると、身体のリズムがどんどんずれてしまい、睡眠相後退症候群のような状態になってしまうのです。
結果的に、月曜日の朝がとても辛く、なかなか起きれなくなります。
もし「いつも眠い」「授業に集中できない」そして「週末にたくさん寝てしまう」といったことが続いているなら、それは単なる疲れではなく、睡眠不足症候群のサインかも。
単なる寝不足だと軽視していたら、もっと不調がひどくなってしまうかもしれません。
生活習慣を改善して、睡眠時間をしっかり確保すれば、朝起きられないつらさが改善する場合があります。
イライラしたり、気持ちが落ち込んだりする、嫌な感情のゆらぎも落ち着くかもしれません。
勉強やスポーツの成績向上、身体の成長、お肌の調子がよくなることにもつながるので、ぜひ毎日の睡眠時間をたっぷりと確保してみてくださいね。
寝る時間と起きる時間を記録して、自身の睡眠を「見える化」してみよう
睡眠の悩みを感じているなら、まずは自身の睡眠を記録してみましょう。
睡眠日誌を記録してみよう
睡眠日誌は、いつ寝て、いつ起きたかを毎日記録していくものです。
「睡眠表」という用紙を使って、手書きでかんたんに記録できます。
ベットの横において、日記感覚で記録するのがおすすめ!
自分の睡眠のリズムが「見える化」できると、どこに改善のヒントがあるか、自分で気づけることもあります。
睡眠表は、病院でも実際に使われているため、どんな不調なのか診断するときにも役立ちます。
今すぐ誰でも始められるので、気になったらぜひ今日から睡眠日誌をつけてみましょう。
※睡眠表の活用方法も後日別記事で紹介予定です!
スマートウォッチでの睡眠記録もおすすめ
スマートウォッチを持っているなら、スマートウォッチをつけたまま寝てみましょう。
ほとんどの機種は、腕につけて眠るだけで、眠った時間や起きた時間が自動で記録されます。
毎日、睡眠日誌をつけるのが苦手でも、スマートウォッチなら自動でできるので簡単です!
なかでもGoogle Fitbit(フィットビット)は、日本の医学研究で使われるほど高精度。
睡眠記録に使うなら、特におすすめです。


スマホのアプリでも睡眠記録ができる!
睡眠のリズムを記録できるスマホのアプリもあります。
ポケモンスリープのように、ゲーム感覚で記録できるアプリもあります。
楽しみながら睡眠を記録できるので、忘れずに毎日続けやすいのが嬉しいポイントですね。
ただ、睡眠記録のためにアプリを使うときは、気をつけてほしいことがあります。
スマホをベッドに持ち込むと、つい動画やゲーム、SNSに夢中になってしまうかもしれません。
睡眠を改善するために、アプリで記録しようとしてるのに、スマホで遊んで眠れなくなったら意味がないですよね。
そのため、寝る前にスマホを触るのは「睡眠記録のためだけ」と決めて、他のアプリを使わないようにしましょう!
「朝、どうしても起きられない」と悩んだときの対処法
「朝、どうしても起きられない」と感じるときは、毎日の生活習慣を少しだけ工夫してみましょう。
それでも改善しないように感じる場合は、信頼できる大人に相談し、医療機関に相談してみてください。
気持ち良い睡眠のために工夫してみよう!
毎日の生活の中には、自分でも気づかないうちに、睡眠のリズムをくずしてしまう習慣があります。
たとえば、次のようなことに当てはまる場合は、少し気をつけてみましょう。
- 朝起きる時間が日によってバラバラ
- 朝ごはんを食べていない
- 体を動かす機会が少ない
- 夕方4時以降にコーヒーやエナジードリンクを飲んでいる
- 夜遅くに、ごはんやデザートを食べる
- 寝る直前までテレビやスマホ、パソコンの画面を見ている
- 夜に激しい運動をしている
- 夜なのに部屋の明かりが明るい
- 爆音で音楽やゲームをするのが好き
- 夜に音楽や推し活でテンションあがる
- 活動をしがち
- お風呂に入らない など
こうした習慣があると、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が下がったりすることがあります。
すべてを一度に変えるのは大変かもしれませんが、できることから少しずつ見直していくことが大切です。
しっかり眠れるようになると、日中の集中力やパフォーマンスも上がっていきます。
医師に相談し、適切な治療を受けよう
自分でいろいろ試しても良くならないときは、一人でがんばりすぎないことが大切です。
お父さんやお母さん、学校の先生など、信頼できる大人に相談してみましょう。
もし身近に相談できる大人がいない場合は、未成年がひとりでも、病院に行って相談できます。
病院に行くときは、健康保険証と診察に必要なお金があると安心です。
わからないことがあれば、行きたい病院に電話をして「こういう相談はできますか?」「何を持っていけばいいですか?」と聞いてみましょう。
無理をせず、自分にできることから少しずつ始めていくことが大切です。
安心して相談できる小児科や、睡眠外来に相談してみよう
睡眠について専門的に診てもらいたいときは、「日本睡眠学会の認定医」や「認定施設」と呼ばれる医療機関に行くのが最もおすすめです。
ただ、そうした病院はまだ少ないので、まずは近くの小児科で相談してみましょう。
高校生でも、小児科で診てもらえることはよくあります。
「朝どうしても起きられない」「夜なかなか眠れなくて困っている」など、今の悩みをそのまま伝えれば大丈夫です。
話すのが不安なときは、睡眠日誌やスマートウォッチの記録を見せながら相談してみましょう。
「朝起きられない」症状に対する、お薬を使った治療法
「朝どうしても起きられない」といったつらい症状に対しては、薬を使った治療が行われることもあります。
たとえば、「メラトニン」というお薬を夜に飲むと、眠くなるタイミングが少し早くなって、寝つきやすくなることがあります。
また、朝にほんの少しだけ使って、目覚めを助けるお薬が使われることもあります。
薬はすべての人に必要なわけではありませんが、「生活リズムを整える工夫をしてもうまくいかない」ときの選択肢のひとつです。
使うときは、必ず医師や保護者と相談し、しっかり説明を受けてから始めましょう。

まとめ:朝起きられないのは、気持ちの問題じゃない
朝、起きたいのに起きられないのって、本当につらいことですよね。
でも、「変わりたい」と思った気持ちがあれば大丈夫。できることから生活リズムを見直したり、必要に応じて病院で相談・治療を受けたりすることで、少しずつ前に進んでいけます。
神林先生が診てきた学生の中には、「授業に集中できるようになった」「遅刻しなくなった」といった変化を実感している人もたくさんいます。
一人で抱え込まず、信頼できる大人に相談してみてください。
「睡眠養生」では、ほかにも参考になる記事を紹介しています。
身体のことを、うまく説明できなくても大丈夫。
この記事をそのまま、大人に見せてみてくださいね。



自分なりのペースを大切にして、無理のないところから改善策を試していきましょう。
この記事でわかったこと
- 朝起きられないのは気持ちの問題ではなく、身体の不調の可能性がある
- 血圧が整いにくい「起立性調節障害」という症状が関係している場合がある
- 身体のリズムがずれる「睡眠相後退症候群」の可能性も考えられる
- 睡眠日誌などで睡眠パターンを見える化してみよう
- つらいときは信頼できる大人に相談し、小児科や睡眠外来に相談
監修:神林 崇
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)









