【保護者必見】朝起きられない子どもを支えるために。家庭でできる対策と治療の選択肢

毎朝、何度起こしても起きられない――そんな子どもの様子に悩んでいませんか?

一見すると怠けや夜ふかしのように見えても、実は「起立性調節障害」や「睡眠相後退症候群」など、医療のサポートが必要な状態であることもあります。

そこで今回は、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)の神林 崇教授に、子どもの起床困難に関係する3つの不調とその対応についてお話を伺いました。

薬による治療から家庭でできるサポートまで、詳しくご紹介します。

子どもの睡眠に不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること

  • 起立性調節障害や睡眠相後退症候群とは?(簡単解説)
  • 家庭でできる、朝起きられない子どもへのサポート方法
  • 治療するための薬や相談先の医療機関の探し方
  • 保護者が疑問に、よくある質問!Q&A
目次

朝起きられない子どもに考えられる、3種類の不調

朝起きられないのは、怠けではなく“不調”のサインかもしれません。ここでは、子どもの起床困難に関係する3つの主な原因を解説します。

起立性調節障害:血圧の不調で起きられない

起立性調節障害(OD)は、自律神経の働きによって調整される血圧がうまく機能しないことで、朝の起床が困難になる疾患です。

特に思春期の子どもに多く見られ、日本小児科学会によると中高生の10%が罹患しているとも言われています。

この疾患では、身体を起こすときに血圧が十分に上がらず、脳に必要な血流が届かなくなってしまいます。その結果、次のような症状が現れます。

起立性調節障害の症状
  • 朝、どうしても起きられない
  • 横になると楽だが、立ち上がるとふらつく
  • 頭痛、腹痛、吐き気がある
  • 午前中はぼーっとして集中できない
  • 夜になると元気が出てくる など

これらの症状は「怠け」や「気のせい」と見なされがちですが、実際には身体の不調が背景にあります。

また、この状態が続くと、遅刻や欠席が重なり不登校につながることもあります。本人は不調をうまく説明できず、周囲に誤解され孤立してしまうケースもあるため、早期の理解とサポートが重要です。

検査は小児科で行われる「起立検査」などで、痛みを伴わず簡単に受けられます。治療には生活習慣の改善や光療法、昇圧剤などが用いられます。

参考:日本小児科学会
   https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2016_ikotyosa_hokoku-114-116.pdf

睡眠相後退症候群:体内時計の後退によって起きられない

睡眠相後退症候群(DSWPD)は、体内時計が通常より遅れて働くことにより、眠くなる時間が深夜にずれ込み、朝起きるのが困難になる睡眠障害です。

睡眠相後退症候群の症状
  • 深夜2時、3時ごろにならないと眠気が訪れない
  • 朝になっても目が覚めにくく、起きられない
  • 日中の活動に支障が出る
  • 学校や社会のリズムに合わない など

体内時計のずれによって睡眠時間が確保できず、慢性的な寝不足に陥るケースもあります。実際、思春期の子どもに多く見られ、生活スタイルの影響を受けやすいことが知られています。

また、睡眠相後退症候群と起立性調節障害は併存することも多く、両者が重なると症状がさらに複雑化します。

脳内の視床下部という部位が血圧や体内時計の調整を担っており、この働きが弱まると両方の症状があらわれやすくなります。実際に、DSWPDと診断された若者の約7割に起立性調節障害がみられたという報告もあります。

治療には、体内時計を整えるための光療法や、メラトニン作動薬の使用が検討されます。

睡眠不足症候群:睡眠不足によるさまざまな不調

睡眠不足症候群は、日常的な睡眠時間の不足が慢性化し、日中の眠気や身体的・精神的な不調が現れる状態です。

睡眠不足症候群を引き起こす生活習慣
  • 平日は早起きで就寝が遅く、5〜6時間程度しか眠れない
  • 週末に寝だめをして10時間以上眠る
  • 平日と休日の睡眠サイクルに差がある
  • 長期休暇中は深夜就寝・昼起床が続く など

このような不規則な生活リズムにより、体内時計が乱れ、起床困難を招きます。

たとえば、夏休みに夜型生活が定着すると、新学期開始後に元のリズムへ戻れず、睡眠不足がさらに悪化していきます。

また、睡眠不足症候群は、睡眠相後退症候群や起立性調節障害と重なって現れることもあります。改善のためには、毎日の起床時間を一定に保ち、生活習慣の見直しが有効です。

朝起きられない子どもの治療に使える薬やサポートを解説!

朝起きられない子どもに対しては、薬を使った治療が行われることもあります。ここでは、実際に使われている代表的な薬についてご紹介します。

メラトニン

睡眠トラブルの治療として、よく使われるのが「メラトニン作動薬」です。

メラトニンは、脳の奥にある「松果体(しょうかたい)」という部分から分泌されるホルモンで、自然な眠りを促す働きがあります。

通常は夜になると分泌が始まり、朝になると減少していくことで、身体に「今は夜」「今は朝」というリズムを伝えています。

このメラトニンの働きを応用して、夜のはじまりを少し早めるような治療が行われます。たとえば、夜にメラトニン作動薬を早めに服用することで、身体に「もうすぐ夜が来る」と知らせることができ、自然な眠気を起こしやすくなります。

オレキシン拮抗薬

夜の寝つきが悪い子どもに対しては、「オレキシン拮抗薬」というタイプの薬が使われることがあります。オレキシンは脳の覚醒状態を維持する物質で、起きているあいだに少しずつたまり、寝る頃に下がるのが通常の状態です。

しかし、オレキシンが働き続けてしまうと、覚醒状態が維持されるため、眠ろうとしてもなかなか寝つけません。

オレキシン拮抗薬は、このオレキシンの働きを弱めることで、過剰な覚醒状態をおさえ、眠りに入りやすくする薬です。

特に、夜になると覚醒度が高まってしまう子どもにとっては、眠気が自然に訪れやすい環境を整える手助けとなる可能性があります。

アリピプラゾール

アリピプラゾールは、もともと精神科の治療に使われてきた薬ですが、ごく少量を使うことで睡眠トラブルの改善に効果的であることがわかってきました。

この薬には、脳内の「ドーパミン」という物質の働きを整える作用があります。ごく少ない量で使うと、夜間の眠りすぎや朝のだるさをやわらげ、無理なく目覚められるようにサポートしてくれます。

筑波大学の研究では、アリピプラゾールが脳の体内時計の働きを一時的にゆるめることがわかりました。

遅れてしまった体内時計の働きが弱くなることで、朝の光など外からの刺激に脳が反応しやすくなり、「朝になったら自然と目が覚める」というリズムを取り戻しやすくなると考えられます。

家庭でできるサポート——まずは「睡眠の可視化」から

子どもの睡眠の問題があるかもしれない、と感じたとき、まず家庭で始めていただきたいのが「睡眠時間の記録」です。

どの時間に寝て、どの時間に起きているのか。何時ごろに眠気が出るのかなどを把握するだけでも、子どもの状態が見えてくるようになります。

起立性調節障害の子どもは睡眠表をつける習慣を

睡眠の様子を記録する方法として、まず始めやすいのが「睡眠表」を使う方法です。

毎日の就寝時刻や起床時刻を書き残していくことで、子どもの睡眠リズムが少しずつ見えてきます。こうした記録は、医師にとっても診断や治療を考えるうえで大切な手がかりになります。

また、記録を続けるうちに、子ども自身が「自分の睡眠」に意識を向けられるようになり、生活習慣を見直すきっかけにもなります。

「睡眠・覚醒リズム表(PDF)」は、ぜひ下記のリンクからダウンロードして、ご家庭での記録にご活用ください。

睡眠・覚醒リズム表(PDF)をダウンロード

※睡眠表の活用方法も後日別記事で紹介予定です!

スマートウォッチやアプリで管理する方法も!

現代はスマートウォッチを使って、睡眠リズムを記録・管理する方法もおすすめです。

デバイスを身につけて眠るだけで、自動的に就寝・起床時間や睡眠の深さなどを可視化できるため、非常に便利です。日記をつけるのが苦手な子どもでも、スマートウォッチなら続けられますね。

スマートウォッチはGoogle FitbitやPixel Watch、Apple Watchをはじめ、様々ありますがFitbitはAndroidでもiPhoneでもつかえ、日本国内の医学研究にも多く活用されているので睡眠管理にはおすすめです。

また、スマートフォンのアプリを使用した睡眠記録もできます。ポケモンスリープなど、ゲーム感覚で取り組めるものもあり、子どもにとっては楽しみながら睡眠記録を続けられます。

ただし、スマホを寝室に持ち込むと、つい遊びすぎて眠れなくなることもあるため要注意。記録を目的としつつ、就寝前はなるべく画面を見ない工夫もあわせて行うとよいですね。

睡眠養生(suimin-yojo)
スマートウォッチの睡眠計測精度は?使用時のコツは?機種は?医学研究もした睡眠指導の専門家が解説 スマートウォッチで睡眠を可視化! スマートウォッチで眠りの質を簡単にモニタリングし、日常の健康管理を強化しませんか?質の良い眠りを手に入れるための具体的な方法や...

子どもの睡眠リズムを整えるために、注意したい生活習慣

子どもが朝なかなか起きられないとき、日常のちょっとした習慣が原因になっていることもあります。

以下のような生活パターンが続いている場合は、睡眠の質やリズムが乱れやすくなるため、注意が必要です。

注意したい習慣睡眠への影響
起床時間が日によってバラバラ体内時計が乱れ、夜の入眠が難しくなる
朝食をとらない朝のサインが届かず、体内リズムが整いにくくなる
運動不足眠気が十分に引き出されず、寝つきが悪くなる
夕方以降のカフェイン摂取(コーラやエナジードリンクも)覚醒作用で寝つきが悪くなる
夜食の習慣消化活動が睡眠を妨げる
就寝直前のスマホ・PC・テレビ使用光の刺激で脳が覚醒し、眠気が遠のく
夜間のゲームやショート動画など興味が強い内容は興奮作用があり眠れなくなります
就寝直前の激しい運動交感神経が高ぶり、眠りに入りにくくなる

睡眠に悪影響を与える生活習慣は、少しずつの見直しでも積み重ねることで大きな改善が期待できます。

急に生活習慣をすべて変えるのは負担になるので、できることから1つずつ取り組んで、少しずつ眠れる生活に整えていきましょう。

よくある質問と答え(Q&A)

Q1:毎朝、何度起こしても起きられません。これって怠け癖?

A:いいえ、決して怠け癖ではありません。

思春期の子どもは、体内時計が後ろにずれる「夜型化」が自然な変化として起きます。その結果、夜眠くならず、朝起きるのがつらくなります。起立性調節障害や睡眠相後退症候群など、医療的なアプローチが必要な状態かもしれません。

Q2:うちの子は休日は昼まで寝ています。これも問題ですか?

A:週末の“寝だめ”は、体内時計の乱れを悪化させることがあります。

平日に寝不足が続くと、休日に長く眠って睡眠不足を補おうとします。しかしこのリズムが続くと、日曜夜に眠れず、月曜の朝がつらくなる——いわゆる“ブルーマンデー”の悪循環に。まずは日々の睡眠パターンを記録して、傾向を見直すことから始めましょう。

Q3:診察を受けるなら、何科を受診すればいいのでしょうか?

A:まずは小児科、または睡眠に詳しい専門医を探してみてください。

お子さんの年齢や症状に応じて、小児科・心療内科・精神科・睡眠外来などが対象になります。特に「日本睡眠学会認定医」や「睡眠外来」と記載があるクリニックは、相談のハードルが低く、安心して受診できます。

参考:日本睡眠学会専門医療機関 114 機関

Q4:お薬を使うのが心配です。精神科の薬って、一生飲み続けるんですか?

A:ご安心ください。必要な期間だけ使う治療です。

治療で使われるお薬は、非常に少量です。症状が安定すれば中止することも多く、「一生飲み続ける」ようなものではありません。また、最近は副作用が少ない薬が増えており、子どもでも安心して使える選択肢が広がっています。

まとめ:睡眠のリズムを整えれば、QOLは大きく変わる

朝起きられないことで学校生活がうまくいかず、「怠けている」「やる気がない」と誤解されることも少なくありません。

しかし、起立性調節障害や睡眠相後退症候群はれっきとした医療の対象となる状態であり、適切な対応によって改善が期待できます。

実際に、朝起きられるようになったことで「遅刻しなくなった」「授業中に眠くならなくなった」と感じている子どもも多くいます。体調が整うと、気持ちにも変化が表れ、自信や意欲の回復にもつながります。

睡眠の問題は、日常生活の根本にかかわるもの。保護者目線で少しでも気になることがあれば、早めに対処し、必要があれば医療機関に相談してみましょう。

神林崇先生が作成された資料も、ぜひご参考にされてみてください。

医療機関に相談する際、この資料を印刷して持参し、「このような症状ではないかと心配している」と相談してみるのもひとつの方法です。

この記事でわかったこと

  • 子どもの夜ふかしは年齢特有のリズム変化によるもの
  • 起立性調節障害と睡眠相後退症候群は併存することが多い
  • 睡眠表やスマートウォッチなどで記録するだけでも改善のヒントになる
  • アリピプラゾールなどの投薬治療で改善する場合がある

監修:神林 崇

*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次