なぜ夜勤はつらい?シフトワーカーが知っておきたい睡眠学!健康リスクと対策とは?

夜勤やシフト勤務を続けていて、「最近なんだか体調がすぐれない」「寝ても疲れが取れない」と感じることはありませんか?

実は、不規則な生活が続くと睡眠だけでなく、消化器の不調やメンタル面にも影響が出てくることがあるんです。

そこで今回は、産業医科大学の丸山崇教授に、夜勤やシフト勤務が心身に与える影響と、健康的に働き続けるためのポイントを教えていただきました。

体調に不安を感じている方はもちろん、これからも元気に働きたい方も、ぜひ最後までチェックしてみてください!

この記事でわかること

  • シフトワークが及ぼす短期・長期の健康リスクを整理
  • シフトワークが及ぼす心の不調
  • 睡眠導入剤を使うときの注意点
  • 仮眠やマインドフルネスなど日常的に実践できる回復法
目次

シフトワークが招く健康リスクとは?

シフト勤務の影響を考えるうえでは、短期的なリスクと、時間をかけて現れる長期的な健康リスクの両方に目を向けることが大切です。

短期的な健康リスク:慣れるまでは心身ともに不調を感じやすい

シフト勤務を始めたばかりの時期は、特に身体が新しいリズムに慣れるまでがつらく、心身に不調を感じやすい時期です。

一般的には3か月から半年ほどで適応するとされていますが、この期間に不調が強く出てしまうと、離職につながる場合もあります。

適応のタイミングや感じ方には個人差があるため、多少の疲労感を感じても、すぐにシフト勤務に適応していないと判断し離職せず半年程度は適応するための工夫や努力をしてみることをお勧めします。

長期的な健康リスク:生活習慣病や重大な疾患リスクが高まる

夜勤や交替制勤務を長く続けていると、生活習慣病やがんなど、さまざまな病気のリスクが高まることが知られています。

人は本来、昼に活動し夜に眠るようにできているため、夜勤による身体への負担は想像以上です。

これまでの研究では、シフト勤務が長期にわたると、肥満や高血圧、糖尿病、さらには乳がんや前立腺がんのリスクが上がることがわかっています。

たとえば、交替勤務を10年続けている人は、虚血性心疾患の発症リスクが約2.3倍に高まるという報告もあります。

シフト勤務の健康リスクを最小限に抑えるためには、こうした影響を「知るだけ」で終わらせず、自分の体調や生活習慣を少しずつ整えていく意識が大切です。

日々の体調変化を見逃さず、自身を守る選択を積み重ねていきましょう

参考:交替制勤務者の健康管理

多くのシフトワーカーが抱える睡眠障害

夜勤やシフト勤務では、もっとも多く指摘されている健康影響が「睡眠障害」です。

眠りたいのに眠れない、睡眠時間が短くなるなどの状況が起きやすくなります。

夜勤明けの睡眠が影響受けるのは、主に2つの要因があります。

ひとつは、身体が本来もっている生体リズムの影響です。昼間は深部体温が高くなり、脳や身体が覚醒しやすいため、日中にまとまった睡眠をとることが難しくなります。

もうひとつは、日中の環境です。太陽の光や周囲の音など、夜間に比べて眠りを妨げる要素が多く、睡眠の質が下がりやすくなります。

実際に、夜勤明けの昼間の睡眠では、深い眠り(ノンレム睡眠)の時間が短くなることもわかっています。

また、生体リズムの乱れにより、夜間の睡眠にも影響が出て、寝つきが悪い(入眠障害)、夜中何度も目が覚める(中途覚醒)、早く目が覚めて、その後寝れない(早朝覚醒)などの症状が出る場合があります。

こうした影響により、疲労回復や健康の維持に必要な睡眠が十分にとれなくなることがあるのです。

お腹が痛い、下痢、便秘などの胃腸トラブルが起こることも

夜勤やシフト勤務を続けていると、胃や腸の不調を感じる方も多く見られます。

実際に、シフト勤務が続いていると胃炎や胃潰瘍、下痢や便秘、胸やけなどの症状を訴える人が多いことが、さまざまな調査でも示されています。

その背景にあるのが「深夜の食事」です。

夜勤中は、どうしても夜遅くに食事をとる機会が増えますが、この時間帯は本来なら胃腸を休ませる時間です。

眠る準備をしている身体に無理をさせることで、消化吸収がうまくいかず、負担がかかってしまいます。

その結果、少しずつ胃腸のトラブルが起こりやすくなってしまうのです。

シフトワーカーが陥りがちなメンタルの不調

シフト勤務の生活にうまくなじめず、気持ちが沈んでしまう……。

そんな声を聞くことは少なくありません。なかには、眠れない日が続いたり、強い疲労感や不安、イライラを感じたりする方もいるようです。

実際、シフト勤務の方は、メンタル面での不調を訴えやすい傾向があることが、いくつもの調査で報告されています。

心の状態は日々の体調や働き方と密接に関わっているため、「ひどく疲れている」「気分が晴れない」「ゆううつだ」「物事に集中できない」などと感じたときには、早めに対処していくことがとても大切です。

ストレスの要因を特定し、可能であれば排除してみよう

強い疲労感や気分の落ち込みを感じているときは、何が一番のストレス要因になっているかを見極めることが大切です。

たとえば、職場での人間関係や仕事内容、業務量などが原因になっていることもあります。その場合は、働き方や職場環境を調整することで、心身の負担を軽減できるでしょう。

一方で、特に大きな要因が見つからないまま、シフト勤務に入ったことで不調が出てきた場合は、シフトワーク自体がストレスの主な原因かもしれません。

夜に働き、日中に眠る生活は本来のリズムと大きくずれるため、体内時計とのズレが不調につながることもあります。実際に、夜勤では体調が悪化し、日勤だけに戻すと改善するというケースも見られます。

こうした場合は、無理に続けるのではなく、いったん日勤に切り替えて様子を見るのもひとつの選択です。

シフトワーカーの心を守るセルフケア

メンタルの不調を感じたとき、すぐに薬に頼る前に、日々のセルフケアを見直してみることも大切です。

たとえば夜勤中は、積極的に仮眠をとることで、眠気や疲労の軽減に効果が期待できます。

食事は、夜勤前に消化の良い軽食をとり、夜勤中は高脂肪・高糖質の食事を避け、胃腸への負担を減らしてみましょう。

夜勤後の休日は、生活リズムを整えるために規則正しい起床・就寝時間を心がけてみてください。

こうした日常生活の小さな工夫が、心身のバランスを整えることにつながります。医療のサポートが必要になる前に、自身に合ったセルフケアの方法を見つけてみてください。

どうしてもツラいときは、産業医や睡眠の専門医に相談してみよう

眠れない状態が続き、日常生活や仕事に支障を感じるようになったときは、無理をせず、医療機関や産業医に相談することもひとつの選択肢です。

まずは、職場の産業医や健康管理窓口に相談してみましょう。

それでも改善が難しい場合には、睡眠を専門とする医療機関の受診を検討してみてください

とくに睡眠外来などの専門医であれば、シフトワークによる不眠や日中の眠気についても理解があり、より適切な対応が期待できます。

受診の際には、睡眠日誌をつけておくのがおすすめです。眠った時間や途中で目が覚めた回数、起きた時間などを記録しておくと、医師が状態を把握しやすく、よりスムーズな診断・助言につながります。

ー 睡眠・覚醒リズム表 ー
睡眠・覚醒リズム表(PDF)をダウンロード

なお、軽い入眠障害などであれば、一時的に薬を使って対処することもあります。ただし、薬はあくまで補助的なものであり、根本的な解決ではありません。

まずは生活習慣やシフトの見直し、セルフケアの工夫を優先し、それでも改善が難しい場合は、医療の力を頼ってみましょう。

睡眠導入剤を乱用するのはNG

睡眠導入剤は「眠れないときの一つの手段」として使うことがありますが、服用方法は医師に相談して、指示通りに服用しましょう。

自己判断に頼るのはおすすめできません。

とくに夜勤明けに無理に昼間寝ようとして睡眠導入剤を飲む方は多いのですが、体内時計がさらに乱れ、さらに不調が悪化してしまう可能性もあります。

そもそも昼間は明るさや体温の関係で、深く眠るのが難しい時間帯です。眠くならないときは、無理に眠ろうとせず、リラックスして過ごしましょう。

シフトの調整や生活習慣の改善などを行い、自然に眠れるようにセルフケアを続けてみてください。どうしても睡眠導入剤を取り入れたいときは、必ず医師の指導のもとで服用しましょう。

「仮眠」がシフトワーカーの健康を守る

仮眠をとろうとしても、眠れない――そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。

「眠らなきゃ」と思えば思うほど、かえって眠れなくなってしまう。眠れないなら、じっとしていても意味がないのかな……なんて、不安になってしまうことがあるかもしれません。

しかし、実際にはぐっすり眠れていなくても、目を閉じて仮眠をとる時間がとても大切です。休憩時間は、できるだけ積極的に仮眠を取り入れるようにしましょう。

ぐっすり眠れなくてもOK。「目休め」のすすめ

仮眠は、シフトワーカーにとって大切な回復の手段です。

とはいえ、仮眠をとりたくても眠れず、つい休憩が終わるまでスマートフォンを見たり動画を流したりして過ごしているかもしれません。

そんなときは、たとえ眠れなかったとしても、目を閉じて静かに休んでみましょう。

アイマスクや耳栓などを使って、周囲の刺激を減らし、15〜30分ほど“目休め”の時間をつくるだけでも疲労感がやわらます。

「しっかり寝る」ことにこだわりすぎず、「目休め」だけでも意味があることを理解して、し仮眠の時間を大切に過ごしましょう。

マインドフルネス呼吸法を試してみよう

急に「寝よう」としても仮眠モードになかなか入れず、気持ちが昂ったり、モヤモヤ気分で眠りモードにつながりにくいことがありますよね。

そんな時に、気持ちが落ち着き、眠気に誘うモードに切り替えやすい、入眠に役立つ「マインドフルネス呼吸法」を試してみましょう。

マインドフルネスは、意識を今の体と心に向けることで、日々の心配事や不安な気持ち、つい頭に浮かんでしまうことを鎮め、ストレス軽減効果も示されています。

その中で、マインドフルネス呼吸法は、目を閉じて、自分の呼吸に意識を向けるだけのシンプルな方法です。呼吸を「吸って吐いたら1、吸って吐いたら2、、」と数える方法も効果的です。

特別な準備やアイテムもいりません。休憩中に目を閉じてゆっくり呼吸をしながら今この瞬間に意識を向けるだけでも、疲れ切った身体には、意外なほどに効果を感じるでしょう。

シフトワーカーにおすすめ!休養感が高まるマインドフルネス呼吸法
  • リラックスできる姿勢で、椅子の上で、行ってみましょう
  • アイマスクや耳栓を使って、外部からの刺激を遮断しましょう
  • タイマーをセットし、起きれない不安を取り除いておきましょう
  • スマートウォッチなどを使っている方は手首のタイマーを数分(5分〜20分程度)にセットしてみましょう
  • ゆっくり呼吸をしながら「吸って吐いたら1、吸って吐いたら2、……」と数えます
  • もし数が分からなくなっても気にせず、また1から数えます
  • 気づいたら眠っていることもあるかもしれませんが、タイマーがあるので安心です

ほんの数分間、呼吸の流れに意識を向けて過ごすだけでも、目からの刺激なども減り、ストレスの軽減や集中力の回復に役立ちます。

さらにマインドフルネスは、集中力や生産性の向上にもつながることが、多くの研究からわかっています。たとえば日本で実施されたプログラムでの研究レポートによると、参加者のストレス指標が改善されただけでなく、仕事の効率も向上したというデータが得られています。

こうした有効性は国際的にも認められており、世界保健機関(WHO)の職場のメンタルヘルスに関するガイドラインでも、マインドフルネスが推奨されているほどです。

マインドフルネスをやったことがない方は、YouTubeやPodcastなどで配信されているガイド音声を活用するのもおすすめです。やさしい声に導かれながら実践することで、自然とリラックスしやすくなります。

夜勤の合間や眠れない時間に、ほんの数分でも静かに心と体を整える時間をとってみてください。それだけでも、次の「最高の覚醒」につながっていくはずです。

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