現代社会では、忙しい日常の中で時間を有効に使いたいと願う人々が増えています。
そのため「ショートスリーパー」と呼ばれる、短時間の睡眠で日々を乗り切る人々に憧れる方も少なくありません。
1日の時間は誰にとっても平等であり、その限られた時間の中で、睡眠時間を削ってでもやりたいことを追求したいと考えるのは自然なことです。しかし、4時間や5時間未満の睡眠で本当に大丈夫なのでしょうか?
その疑問に対する答えとショートスリーパーの実態について、睡眠指導の専門家として解説します。
タイムパフォーマンスを求めてショートスリーパーに憧れている方も、ご自身に最適な睡眠について今一度、考えてみましょう!
この記事でわかること
- ショートスリーパーは実在するのか
- ショートスリーパーではない人の睡眠不足のリスク
- 自分にとって最適な睡眠時間を知る方法
ショートスリーパーの実態
睡眠医学の研究によれば、ショートスリーパーと呼ばれる人々は確かに存在することが確認されています。どれくらいの比率か、気になりますよね?
2003年に行われた疫学調査によると、女性4.3%、男子3.6%で習慣的睡眠時間が5時間以下と調べられたのですが、これには無理に睡眠時間を短くした人が含まれているそうです。
現時点では遺伝的に短時間睡眠者がみられることがあるそうなので、ご自身が本当にショートスリーパーだと自覚する場合にはご家族も短時間睡眠である可能性もあります。つまり医学の観点から見ると、ショートスリーパーの体質は「遺伝による要素が大きい」とされています。
ちなみに、短時間睡眠の方が睡眠時間を伸ばすと、どうなるのでしょうか?
アメリカの睡眠医学会では、短い睡眠についてご家族や健康管理担当者が心配して診察を受けることが報告されています。そこで、短時間睡眠者に薬物を投与して睡眠時間を延ばそうとすることで、合併症や副作用を引き起こしているそうです。本質的な体質に抗うのは、やはり負担なのでしょうか。。。
無理に睡眠を伸ばさなくても元気なのですから1日を目一杯楽しめるショートスリーパー。実はこのような特徴も研究報告されています。
というのも「短時間睡眠者は、心配事が少ない方が多く、職場で有能とみなされている事が多い」という調査レポートです。エジソンが短時間睡眠だというお話しは睡眠学に関わる方には有名なお話しです。他の方よりも長時間働いていても日中の生活に睡眠課題(精神機能への影響や日中の眠気)が起きないのが短時間睡眠の方なので。人よりもハイパフォーマンスで活動する時間が多いのですから、事業成果をだすことが出来るのかもしれませんね。

そんなわけで、1日をたっぷり使ってもハイパフォーマンスなショートスリーパーには、憧れる方も多いのではないでしょうか。
実際、ショートスリーパーにはなれるのでしょうか?
結論をいいますと、ショートスリーパーの体質解明については現在も研究が続いていていますが、あくまで現時点の見解としては、特異的な特定の体質によるものであり、誰もがトレーニングなどでショートスリーパーになれるわけでは無いとされています。
医師が診断すると「自称ショートスリーパー」というケースが多いそうです。「自称」と「遺伝的」なショートスリーパーの本質的な違いは何でしょうか。
米国睡眠学会が公表している、睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)の短時間睡眠者の定義は「日常的に平均睡眠時間が6時間未満であり、睡眠・覚醒に関連した訴えがなく、明らかな日中の機能障害を示さない」とされ、平日と休日でも関係なく6時間未満の睡眠で、日中の活動時に支障するような眠気がおきないそうです。
遺伝的なショートスリーパーは、休日に睡眠時間が増えていたり、日中にあくびがでて眠なるようなことがなく。また、他人にイライラするような精神的な影響が出ない、これが大きな違いということです。
無理な睡眠削減がもたらす健康リスク
本質的にショートスリーパーではない人が、無理に睡眠時間を削ることは、健康寿命を縮めるリスクが高まります。私が一緒に活動している睡眠学者や医師たちも、口を揃えて「睡眠時間を確保することは非常に重要」と強調しています。
睡眠不足が続くと体調悪化にも気付けなくなる
ぐっすりと長時間眠り、すっきりと目が覚めると、その日は脳がクリアで体力的にも活動的になれます。一方で、睡眠不足になるとパフォーマンスが低下し、脳がクリアに働かず、常に頭がもやもやとした状態になります。
この違いが自覚できなくなっているケースも有ります。それは常に睡眠不足だと、それが当たり前の感覚になってしまい、体調が悪化していることに気づけなくなるのです。

ただ長く眠ればいいわけではない!重要なのは「睡眠の質」
睡眠不足が健康に悪影響だからといって、ただ単にベッドに長時間横たわっていればいいというわけではありません。
時間を確保した上で次に重要なのは、睡眠の「質」です。たとえ同じ睡眠時間でも、その質を高めることで体の回復力が向上します。
たっぷりの睡眠をとったつもりで目覚めから疲労感がある場合もあります。この場合、実は途中で何度も目が覚めていたり、うなされていたり、いびきをかいていたり、、、と、本質的には眠れていない状態があり、十分な休養(メンテナンス時間)が取れないことがあります。
この場合、睡眠時間を確保したはずなのに、目覚めの調子も悪く睡眠休養感を得らず、脳もクリアに働きません。もやもやーっとだるい感じで日中も過ごすことになります。
質の高い睡眠を意識することで、睡眠効率はアップし、しっかり就寝時に身体のメンテナンスができた結果、日常生活のパフォーマンスも大きく向上していきます。
自分にとって最適な睡眠時間を知る方法とは?
疾患リスクが少なく、体調にも良いとされる理想的な睡眠時間は7~8時間とレポートされていますが、実際に必要な睡眠時間は個人によって異なります。
厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド 2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
成人における睡眠時間は「適正睡眠時間は個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」と推奨されています。
可能であれば、まずはできるだけ今より長く睡眠時間をとりましょう。数日間(大体3日目)ぐっすりと眠り続けると「これ以上眠れない」という時間に落ち着くので、それがご自身にとって適切な睡眠時間だと考えてください。
最初の1〜2日は溜まっていた睡眠負債を返済するべく、たっぷりの睡眠が取れたりしますが、徐々に寝不足が解消すると安定した睡眠時間がでてきて、それ以上は眠れないし、寝なくてもスッキリと1日クリアーな脳で活動できている感覚になります。
しかし、長くしたいとはいえ、忙しくって長く眠る時間をとれない方も多いですよね。
そんな方は、日中の感覚(眠気が無いか)を観察しつつ、体調をモニタリングできるデバイスを活用することで適切な睡眠時間を見極めましょう。
昼間の眠気やパフォーマンス低下は睡眠不足のサイン
日中、ふとした瞬間にぼーっとしたり、会議中に強い眠気を感じたりすることはありませんか?
昼間の眠気は、夜間の睡眠時間が不足している可能性が高いサインです。睡眠不足が続くと、日中のパフォーマンスに影響が出ることがよくあります。
非常に強い眠気がある状態だとマイクロスリープ(瞬眠)と呼ばれる、ほんの数秒間の睡眠脳波が観測されてます。このような睡眠が現れた時の作業過誤の発生頻度はとても多くなります。
マイクロスリープ(瞬眠)は自分でも、何が起きているのか気付けない感覚に陥ります。身体の危険を伴う作業をを行っている場合には、すぐに中断して20分程度の昼寝(パワーナップ)をとって、大きな事故などのミスに繋がらないよう、ご自身を守るようにしましょう。
スマートウォッチや体組成計で自分のデータを可視化してみよう!
スマートウォッチや体組成計を活用し、睡眠状態や体調のデータを記録してみましょう。実際に眠っている時間を具体的に可視化することで、得られるメリットがたくさんあります。
特に1週間での変動や、過去のデータを簡単に振り返ることができることが便利です。何時間眠ったときに心や体の調子が良いのかが明確になるため、ご自身にとって適切な睡眠時間が把握できます。
デバイスによる体調モニタリングの実体験
実際に、私もスマートウォッチや体組成計で睡眠状態や体調の違いを毎日記録しています。

忙しくて5時間の睡眠が1週間続いた時期のデータを見ると、明確に変化が現れていました。
例えば、体組成計のデータを見ると、5時間睡眠が続いたときは体重が増加する傾向にあります。「起きている時間が長いと消費カロリーが増えて体重が減る」と思いがちですが、実際にはホルモン分泌の変化によって体重が増えやすくなるんです。
また、5時間睡眠の日はスマートウォッチで記録される「レム睡眠」の時間が減ります。「レム睡眠」はメンタルの回復に重要な時間ですが、それが不足すると、日中イライラしやすいことにも気が付きました。
ショートスリーパーは遺伝によるもの。睡眠不足はリスクが多いので要注意
ショートスリーパーは基本的に遺伝で決まっており、後天的になれるものではないという前提で自分にとって最適案睡眠時間を確保するようにしましょう。
日中に眠気を感じることが多い場合は、寝不足が続いているサインです。
睡眠改善に取り組むことは、ダイエットやメンタルケアにもよい影響を与えることができます。
質の高い睡眠を得ることで、心身ともに最高の自分に出会える未来が待っています。健康的な体調を維持するためにも、ぜひ睡眠改善を意識して取り組んでみてください!
この記事でわかったこと
- 先天的なショートスリーパーは存在するが、努力でなれるものではないというのが現在の見解
- 睡眠不足が続くと脳機能低下や体調不良のリスクが上がる
- 昼間の眠気があるなら寝不足、スマートウォッチを活用すると適切な睡眠時間を判断しやすい
この内容をPodcastのラジオ番組で聞くことができます。
出典:睡眠学の百科事典(日本睡眠学会編)「短時間睡眠者と長時間睡眠者」「ヒューマンエラー」より
監修
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)























