20年以上の臨床経験から専門医が教えてくれる、睡眠時無呼吸症候群の治療法

CPCP、睡眠時無呼吸症候群_睡眠養生

「いびきがひどい」「寝ても疲れが取れない」「昼間にやたらと眠くなる」——それでも、病院に行くほどじゃないかも……と、つい放置していませんか?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、本人が気づかないまま進行しやすく、健康リスクが見過ごされやすい病気です。

そこで今回は、睡眠養生 編集部が、20年以上の臨床経験を持つ専門医・岩根隆太先生(Sleep Rest Clinic 幕張 理事長)に訪問取材!睡眠時無呼吸症候群(SAS)の見極め方や検査のタイミング、治療の選択肢などを教えていただきました。

「もしかして……?」と思ったら、まずはこの記事で睡眠時無呼吸症候群(SAS)について知るところから始めてみてください。

この記事でわかること

  • 20年以上の臨床経験を持つ睡眠専門医が語る、睡眠時無呼吸症候群治療の実情
  • 精神的・身体的要因が絡む睡眠障害への包括的な診療スタイル
  • 睡眠時無呼吸症候群検査の流れと、どのような人が検査対象となるか
  • 「無自覚な睡眠時無呼吸症候群」の見極め方
  • 家族やパートナーが受診を促すための共感的なアプローチ方法
目次

睡眠時無呼吸症候群(SAS)検査の実態と治療の流れ

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、眠っている間に呼吸が止まってしまう病気です。

睡眠時無呼吸症候群は眠り出すと呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた止まってしまいます。


これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現します。酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。酸素濃度の低下により動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。さらに睡眠不足によるストレスにより、血糖値やコレステロール値が高くなり、さまざまな生活習慣病やメタボリック・シンドロームがひきおこされます。

1時間あたり10秒以上の呼吸停止が20回以上出現するような中等症・重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病・眠気による事故などを引き起こし、死亡率が非常に高くなるため、すぐに治療が必要です。

引用:睡眠時無呼吸症候群 / SAS(厚生労働省

日本では、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者が900万人以上いると推定されていますが、実際に検査や治療を受けている方はごくわずかです。しかし、放置すれば生活習慣病や心血管疾患など深刻な病気のリスクが高まることから、近年では深刻な健康課題として注目されています。

参考:睡眠時無呼吸症候群の評価における在宅用睡眠時脳波測定の有効性を確認(IIIS 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)

大木さと

ここからは、岩根先生と睡眠養生編集長の大木都(さと)との、対談形式でお送りいたします!

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査・治療の流れ

大木さと

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査や治療については、まだあまり詳しく知られていないように思います。そこで、検査の進め方や治療の流れについて教えていただけますでしょうか。

岩根隆太 先生

当院は保険診療機関であるため、ガイドラインに沿った検査・治療を行っており、一般的なクリニックと同じです。
ただしSleep Rest Clinic 幕張の特色として、SAS検査が必要かどうか判断する前に、上気道の構造を視診や内視鏡検査で確認しています。

補足:一般的なクリニックの検査は、以下のような内容が挙げられます。

1.簡易診断装置によるスクリーニング検査(外来)
まずは自宅で一晩、簡易診断装置によるスクリーニング検査を受けてもらいます。同時に、ホルター型(24時間)心電図、心臓超音波検査などの諸検査も行います。

2. ポリソムノグラフィー(PSG)(入院)
簡易診断検査でSASが疑われた場合は、入院(1泊)の上PSG検査を行い、診断を確定します。検査結果は後日外来で説明し、SASであれば後日改めて検査入院(1泊)の上、鼻マスク式持続陽圧呼吸(CPAP療法)による治療効果をみます。

引用:睡眠時無呼吸外来(国立循環器病研究センター)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)検査を受けてみてほしいケース

大木さと

睡眠の検査を受けたほうがよいのは、どのような方なのでしょうか?

岩根隆太 先生

いびきや夜間の呼吸停止を指摘されたことがある方はもちろんですが、日中の強い眠気や疲労感、朝の頭痛、夜中に何度も目が覚める、夜間の頻尿、過眠傾向、朝起きられない、集中力や記憶力の低下が気になる方も、一度検査を受けていただくとよいと思います。  
また、コントロールの難しい高血圧や心疾患をお持ちの方、年齢の割に老化が目立つ方、更年期障害のような症状が長引いている方も、実は睡眠に原因があるケースがあるため、検査をおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を受けたほうがいいケース

▼ 典型的な症状がある方

  • いびきをかく、または夜間の呼吸停止を指摘されたことがある
  • 日中に強い眠気や疲労感がある
  • 朝起きたときに頭痛がする
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 夜間にトイレに行く回数が多い(夜間頻尿)
  • 過眠傾向がある
  • 朝なかなか起きられない
  • 集中力や記憶力の低下が気になる

▼ 関連疾患や体調変化がある方

  • 高血圧や心疾患があり、コントロールが難しい
  • 年齢のわりに老化が目立つ
  • 更年期障害のような症状が長引いている

無自覚な睡眠時無呼吸症候群(SAS)の方も多い

大木さと

ご経験の中で、印象に残っているケースがあれば教えていただけますか?

岩根隆太 先生

当院は睡眠時無呼吸症候群だけを専門にしているわけではなく、さまざまな睡眠の悩みを抱えて来院される方が多くいらっしゃいます。
その中には、ご本人に睡眠時無呼吸症候群の自覚がないにもかかわらず、実際にはそれが原因のひとつだった、というケースが非常に多く見られます。

家族やパートナーの睡眠時無呼吸症候群に気づいたときは?

大木さと

ご家族やパートナーが「もしかしたら睡眠時無呼吸症候群かも?」と気づくこともあるかと思います。ただ、いざそのご本人に受診を勧めようとしても、なかなか伝えづらかったり、断られてしまうケースも多いようです。
たとえば、いびきが気になったときなど、相手の気分を害さずに検査や受診をすすめるための声かけのコツや、先生がご家族にアドバイスされている方法があれば教えてください!

岩根隆太 先生

治療は、本人が望み、自ら治療に参加しない限り、うまくいかないことがほとんどです。そのため、無理に受診させようとしても、治療がうまくいかないケースが多くあります。
またアプローチには繊細さが必要で、その方に合った方法でなければ、かえって気分を害してしまうこともあります

大木さと

周囲から睡眠について伝えるのは、難しいんですね。

岩根隆太 先生

私がご家族にお伝えしているのは、まず「共感」を示すことです。
受診しない理由はさまざまで、「怖い」「恥ずかしい」「時間がない」「面倒」といった気持ちが背景にあります。まずはそうした思いに共感し、相手の気持ちを理解していることを伝えたうえで、愛情を込めて病院の受診を促すようアドバイスしています。

大木さと

傾聴することと共感、そして愛情を込めた言葉がけが大事なんですね。

岩根隆太 先生

最近では、FitbitやApple Watch、Garminなどのデバイスがかなり普及してきています。こういった健康デバイスをプレゼントすることで、健康への意識を高め、病識を持ってもらい、通院へのきっかけにする方法もご提案しています。

見過ごされがちな睡眠時無呼吸症候群のケース

大木さと

睡眠時無呼吸症候群というと、いまだに「太っている中年男性の病気」といったイメージを持たれている方も多いように思います。ですが、私が睡眠に関するご相談に乗っていると、実際にはもっと幅広い方が該当する可能性があると感じています。
先生のご経験の中で、思いがけず睡眠時無呼吸症候群だったというようなケースがあれば、自分ごととして気づくヒントになると思うので、ぜひお聞かせいただけますか。

見過ごされがちな睡眠時無呼吸症候群(SAS)

岩根隆太 先生

先ほどの話と重なりますが、当院には、睡眠に関する悩みを訴えて受診された方の中に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を見過ごしていたケースが非常に多くあります。
SASは肥満の方だけの病気ではなく、急に発症するものでもありません。そのため、自覚しにくく、健康診断などでも検査の対象にはならないことが一般的です。
びきや日中の眠気、疲労感など、SASに多く見られる症状が何日も続いている場合は、一度検査を受けてみることをおすすめしています。

「もしかして?」睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサイン

大木さと

睡眠時無呼吸症候群というと「気づきにくい病気」という印象がありますが、見た目や体質から「もしかして?」と気づけるようなサインはあるのでしょうか?

岩根隆太 先生

SASの症状自体がサインではありますが、徐々に進行するため、強い症状が出ない限り気づきにくいのが現実です。
そうした中でも、急に症状が現れやすいタイミングとしては、上気道が腫れる時期が挙げられます。たとえば、風邪や花粉症のとき、またはむくみが強いときなどです。

大木さと

風邪や花粉症のときの睡眠に注目!ってことなんですね。そのほかにはありますか?

岩根隆太 先生

体重が増加したときや妊娠中もリスクが高まります
そのほか、筋肉が過度に弛緩する状態でも症状が出やすくなります。たとえば、筋弛緩作用のある薬を服用したときや飲酒後などが該当します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)検査を受けるタイミング

大木さと

睡眠に不調を感じても、「いつ受ければいいのか分からない」と迷ってしまう方も多いと思います。検査を受ける適切なタイミングについて、アドバイスをいただけますか?

岩根隆太 先生

疑わしいと感じたときが、検査を受けるタイミングです。
逆に、検査を勧めないのは「普段とは異なる生活をしているとき」です。普段の状態で検査を行わないと、本来の睡眠状態が正確に把握できないためです。

CPAPを使っても、気持ちよく眠れないと感じる場合は?

大木さと

睡眠時無呼吸症候群の治療としてCPAPを使っているのに「ぐっすり眠れた感じがしない」とお悩みの方もいらっしゃるようです。そうした場合でも、治療は続けたほうがよいのでしょうか?

岩根隆太 先生

治療というものは、マイナスの状態からゼロを目指すものであり、多くの場合プラスにはなりにくいものです。
気持ちよく眠れないなどのマイナスの感覚が残っている場合は、何らかの睡眠障害が引き続き存在しているか、あるいは治療に伴う違和感や副作用が生じている可能性があります。

大木さと

CPAPを使ってもあまりよく眠れないと感じるときは、もう一度医師に相談した方がよいのでしょうか。

岩根隆太 先生

はい、そのような状況を医師に詳しく相談し、原因を一つずつ探っていくしかありません。
ただし、CPAPで睡眠時無呼吸をしっかり制御することによって、脳梗塞や心疾患などの重篤な合併症を防いでいます。気持ちよさを感じられないかもしれませんが、それでも治療を継続する十分な意味があるので、継続していただきたいです。

まとめ:睡眠の質が変われば、人生の質も変わる

睡眠の悩みはさまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多く、適切な診断と治療を行うことが大切です。

特に「疲れが取れない」「慢性的な眠気がある」といった不調を軽視してしまうと、深刻な病気にも繋がりかねません。

「もしかしたら……」とご自身の睡眠が心配になったときは、一度は睡眠の検査を受けてみてください。睡眠の検査はわからないことが多くて、戸惑ってしまうかもしれませんが、心配になったときが検査のタイミングです。

検査を受けて睡眠時無呼吸症候群だと診断されても、適切に治療を行えば、快活な毎日や将来の健康を取り戻しやすくなります。この記事をきっかけに、ご自身やご家族の睡眠を一度見つめ直してみませんか?

この記事でわかったこと

  • 睡眠の悩みはさまざまな要因を包括的に治療していくことが大切
  • いびきや眠気だけでなく、老化・高血圧にも睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがある
  • 「寝ても疲れが取れない」人は、睡眠障害が背景にある可能性が高い
  • 睡眠時無呼吸症候群は肥満だけでなく、痩せ型や女性にも多いと知っておくべき
  • 病識のない方には、共感と日常的な工夫から関心を促すことが大切

監修:岩根 隆太(いわね りゅうた)

*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)

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