夜ぐっすり眠れたはずなのに、朝起きても疲れが取れない。日中もなんとなくボーッとしてしまう——そんな状態が続いていませんか?
もしかすると、それは「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が関係しているかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群の治療法として知られるCPAP(シーパップ)は、「マスクをつけて眠るだけで劇的に改善する」というイメージを持たれがちです。しかし実際には複雑で、実は継続率を保つのが難しい治療でもあります。
今回はSleep Rest Clinicの岩根隆太先生に、CPAP治療のリアルと上手な向き合い方についてお話を伺いました。誤解されやすい治療の本質と、治療を「続けられる」ためのヒントを、わかりやすくお届けします。
この記事でわかること
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を受けるべきタイミング
- 身体面と精神面の両方から睡眠不調を診る医療の視点
- 簡易検査やPSG検査が持つ、本来の役割と可能性
- CPAP治療が続かない理由と、継続するための工夫
- CPAP治療の効果が実感できないときの考え方

睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療のフローと検査の意義
大木さと睡眠時無呼吸症候群かも?と思ったとき、どのようなタイミングで検査にいけばよいのでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群かも?と思ったら検査へ



睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査は、本来、体調が落ち着いているときに行うのが理想です。症状が悪化しているタイミングでは、普段の睡眠状態と異なってしまい、正確な診断につながりにくくなるためです。
——けれども実際には、多くの方がつらさを感じたときに「もしかして」と気づき、受診されます。そして、症状が落ち着いてしまうと「もういいかな」と思って病院から足が遠のいてしまいがちです。
だからこそ、のど元過ぎてしまう前に——つまり「つらくなくても、気になったときに受診する」という意識が大切です。自覚症状が少ないSASだからこそ、早めの受診と検査が、適切な治療への第一歩になります。


病院へ訪れる患者の男女比は?



睡眠相談で病院に行くって、抵抗がある方も多いと思うんです。睡眠専門クリニックにくる患者さんは、男性と女性どちらが多いんでしょうか?



Sleep Rest Clinicに通院する患者さんは、男女ともに同じくらいの割合です。特に女性が多いというわけでも、男性が多いというわけでもなく、だいたい半々という印象です。
——精神的なストレスを背景に持つ方も多く、いまは男女問わず社会で活躍する時代ですから、睡眠に悩みを抱える層にも偏りは見られません。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関しても、男性だけの病気と思われがちですが、実際には女性の患者さんも多くいらっしゃいます。
もともと女性は骨格が小さく、男性は加齢とともに体重が増加しやすい。特徴は男女によって違いますが、どちらもそれぞれSASになりやすい要素を持っているんです。そのため、Sleep Rest Clinicには若い女性の患者さんも多く来院しています。
初診では丁寧なカウンセリングで、身体と心の両面から診ていく



Sleep Rest Clinicでは、初診時にまず丁寧なカウンセリングを行い、身体的な側面と精神的な側面の両方から症状を確認していきます。
——睡眠に関する不調は「単なる不眠」と片づけられがちですが、その背景にはさまざまな要因が潜んでいるため、慎重なヒアリングが欠かせません。
岩根先生は、患者さん一人ひとりに合わせて「どこに問題の本質があるのか」を探る姿勢を大切にしており、必要に応じて身体的な検査だけでなく、精神的なアプローチも組み合わせて対応しています。
また、可能であれば初診の段階で簡易的な呼吸の検査を行うこともあります。これは自律神経の状態を予測する手がかりにもなり、より適切な治療方針の判断につながります。
睡眠の悩みは人によって原因もアプローチ方法も異なるため、まずは全体像を丁寧に把握することが第一歩となります。
簡易検査とPSG検査を精神的な指標としても活用



Sleep Rest Clinicでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の評価にあたり、簡易検査や脳波を含む精密検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)を実施しています。これらの検査は単に呼吸状態を調べるだけでなく、精神的な不調のサインを読み解くための重要な手がかりにもなります。
——たとえば、脳波や体動のデータから、「深い眠りが極端に少ない」「夜間に何度も目覚めている」といった状態が明らかになります。そこから、自律神経の過度な緊張や、うつ傾向といった心の状態が見えてくることもあるのです。
実は、PSG検査はうつ病の補助診断としても保険適用される検査です。しかし、こうした目的で活用されている医療機関はまだごくわずか。



私はこの検査の多面的な可能性に注目し、身体だけでなく心の状態にも目を向けながら、睡眠の質を丁寧に評価しています。
——睡眠の不調の背景には、無呼吸のような身体的な原因だけでなく、精神的な問題が関わっていることも少なくありません。だからこそ、検査結果を一方向から判断するのではなく、多角的に読み解いていくことが、適切な診断と治療につながると考えています。
検査データを最大限に生かし、保険適用の範囲でも活用



他院で実施された検査結果を持参された方に対しても、そのデータを丁寧に読み解き、診療に活用しています。
——すでに受けた検査があれば、改めて全額自己負担で検査をやり直す必要はなく、必要に応じて保険適用の範囲内で診療を進めることが可能です。
特にPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)は、保険が適用される検査の一つであり、睡眠時無呼吸症候群の診断・評価だけでなく、精神面の評価にも応用できます。保険適用の制度を最大限に活かしながら、過去の検査データも無駄にせず、患者さんの負担をできるだけ抑えた診療を心がけています。
手術が必要な方は、近隣の信頼できる病院へ紹介することも



Sleep Rest Clinicでは、現在は手術を行っていませんが、手術が必要と判断された場合には、信頼できる近隣の耳鼻咽喉科をご紹介しています。
——手術後は再びSleep Rest Clinicに戻ってCPAP(シーパップ)治療を継続する方もいれば、紹介先の医療機関でそのまま治療を続けるケースもあります。
また、CPAP治療は当院で行いながら、鼻の治療だけを他院で受けるといった柔軟な連携も可能です。
患者さんにとって最もよい方法を一緒に考え、必要に応じて医療機関どうしが協力しながら、無理なく治療を続けられる体制を整えています。


CPAP治療を継続するために



実際にCPAP治療を始めても、気持ちよく眠れた実感がなく、続けるべきか迷っているという声を聞きます。CPAPをつけると「最高の睡眠が手に入る」と感じる方もいるようですが、実感できない方に対してはどのように対応されているのでしょうか。
機器の扱いを業者任せにしてしまう現場の現実



CPAP治療がうまくいかない原因のひとつに、機器の取り扱いを業者に丸投げしてしまっている現状があります。
——実際に、治療現場では「とりあえずマスク合わせといて」と業者に任せてしまうことも多いんです。でも、医師ですらしっかり理解できていないことがあるのに、業者が完璧に対応できるかというと、なかなか難しいですよね。
もちろん業者さんもパターンを持っているので、一定の流れで対応してくれます。うまくいくケースもありますが、実際には「なんとなく使えてるけど、あまり変化を感じない」と感じている方のほうが多い印象です。
治療の効果をしっかり実感できていないのに、「CPAPってこういうものか」と思ってそのまま使い続けてしまう……そんなケースも少なくありません。だからこそ、本当に今の治療が合っているのかを、ちゃんと確認していくことが大切なんです。
Sleep Rest Clinicでは7〜8割が継続中という高い定着率



Sleep Rest Clinicでは、CPAP治療を始めた方のうち、7〜8割の方が継続できているという、高い定着率を維持しています。
——一般的には「半分くらい続けばいいほう」と言われるなか、なぜこれほどまでに継続率が高いのか——その理由は、細やかなフォローにあります。
「マスクが合わない」「息苦しい」といった違和感や使いにくさをそのままにせず、一つひとつ丁寧に解消していく。それを徹底しているのが、当院のCPAP治療です。
また、こうした対応の中心には、CPAP治療に精通した療法士の存在があります。僕にとってまさに“右腕”とも言えるスタッフが、日々患者さんに寄り添いながら、治療を支えています。だからこそ、無理なく続けられる環境をつくることができているんです。


フルフェイスマスクに頼らず、鼻用マスクを最適に使う方針



CPAP治療で使うマスクにはいくつか種類がありますが、Sleep Rest Clinicでは、鼻に装着するタイプのマスクを基本としています。
▼補足:CPAPのマスクの種類
| マスクの種類 | 特徴 |
|---|---|
| 鼻マスク | ・小さくて安定感がある ・顔を覆う面積が少ない ・高い圧力設定でも耐えられる ・口が開いていると空気が抜けるため、口を閉じて寝る習慣が必要 |
| ピローマスク | ・肌に当たる面積が最も少ない ・かぶれる心配がほとんどない ・とても軽く視界の邪魔にならない ・高い圧には向かない・鼻づまりの方には適さない |
| フルフェイスマスク | ・鼻詰まりや口呼吸の方にも対応 ・高い圧設定でも耐えられる ・空気漏れが起きやすい |
——一般的には、鼻マスクで上手く鼻呼吸ができないと感じたとき、すぐ「フルフェイスマスクに替えましょう」となるのですが、当院ではあまりその選択肢に頼りません。



実際、フルフェイスマスクを使っている患者さんは、全体の中でもごくわずかで、片手で数えられる程度です。
——というのも、フルフェイスマスクは、開口して呼吸する事で気道を塞ぎやすくなり、空気を強く送ることで快適さを損なってしまうことがあります。
マスクを変える前に、もっとできることがあるはずです。たとえば鼻の治療を行えば、呼吸がしやすくなり、マスクの不快感も軽減できます。
快適に治療を続けられれば、CPAPの離脱率も自然と下がっていきます。こうした考え方のもと、CPAP療法士と二人三脚で一人ひとりに合った選択肢をご提案しています。
CPAP治療の「期待」と「現実」を丁寧に伝える



CPAPで治療を始める患者さんに、どれくらいで実感できるとお伝えするのですか?
効果の体感は人それぞれ。だからこそ十分な説明が不可欠



CPAP治療は、装着すればすぐに効果を感じられるというものではありません。症状の重さや、精神的な状態によっても治療の進み方には差があります。
——たとえば、重度の睡眠時無呼吸症候群の方であれば、装着初日から「ぐっすり眠れた」と感じるケースもあります。一方で、精神的な不調も抱えている場合は、まずは睡眠の質を整えることから始め、じっくりと心身を回復させていく必要があります。
治療の効果を感じるまでの期間も、人によってさまざまです。1週間ほどで体が軽くなる方もいれば、3カ月ほどかけてゆっくり改善していく方もいます。
だからこそ、最初の段階で「どれくらいで効果が出るか」「何を目標に治療を続けるのか」といった説明を丁寧に行うことがとても大切です。装着してすぐに変化を実感できなくても、焦らずに取り組んでいけるように。そう
CPAPは「元気にする」ではなく「マイナスをゼロにする」治療



CPAP治療は、マイナスだった状態をゼロに戻す治療です。
——もともと睡眠時無呼吸症候群(SAS)のある方は、身体が知らず知らずのうちに“マイナスの状態”になっていることが多くあります。CPAPは、そうした状態を“ゼロ”、つまり「普通の状態」に戻すための治療です。
治療を始めると、「なんだか元気になった気がします」とおっしゃる方もいますが、それは決して“プラスになった”のではなく、本来あるべき姿に近づいてきたということなのです。



CPAPで元気になったと感じられている患者さんには、「これがあなた本来のコンディションなんですよ」と丁寧に説明するようにしています。
——CPAPを使えばすべてが元通りになるというわけではありません。
装着による違和感が残る方もいらっしゃいます。だからこそ、治療の意味や目標をしっかりと理解していただいたうえで、無理なく続けられることが大切だと考えています。


継続できる人とできない人の違いは、納得感と信頼感



CPAP治療を継続できるかどうかは、「納得感」や「信頼感」が大きなポイントだと思っています。
——睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧や心筋梗塞、脳卒中といった重い合併症につながることもあります。たとえマスクに多少の違和感があっても、「これを使うことで、自分の将来の健康リスクが減るんだ」と納得できていれば、前向きに治療を続けられるはずです。
また、がんばって治療を続けている方には「しっかり効果が出ていますよ」とお伝えしています。自身の努力がちゃんと報われていると感じられれば、「続けてみよう」という気持ちが強くなるんです。
ただ、治療を「なんとなくやらなきゃ」と受け止めていると、不信感や不安が少しずつ積み重なってしまいます。「これは何のための治療なのか」「どんな仕組みで良くなるのか」——そうしたことを丁寧にお伝えし、信頼関係を築いた上で治療を進めていきます。
もちろん、一度の説明ですべてを理解できるわけではありません。だからこそ私たちは、何度でも、わかりやすく、丁寧にお話しすることを大切にしています。
まとめ:信頼できる医師と、納得の上でSAS治療に挑もう
睡眠時無呼吸症候群の治療は、ただCPAPを装着するだけで終わる治療ではありません。
治療を続けられるかどうかのカギは、「これが自分に必要なんだ」と納得し、信頼できるサポートの中で進めていけるかどうかにあります。
治療効果の感じ方は人それぞれ。けれど、「自分の努力がきちんと報われている」と実感できることが、継続する力につながります。
Sleep Rest Clinicでは、そうした気持ちを支えるために、一人ひとりに丁寧に向き合いながら、最適な治療を一緒に考えています。
睡眠の質は、人生の質にもつながっていきます。もし睡眠の治療やCPAPの付け心地に不安や違和感を感じているなら、「そういうものか」で終わらせず、信頼できる医師やCPAP療法士に相談してみてください。
この記事でわかったこと
- 睡眠時無呼吸症候群を疑ったら、症状が強くなる前に検査を
- 睡眠の検査とともに、精神面からの影響にも注目
- PSG検査は心の状態を知る手がかりにもなる
- CPAP治療は「元気にする」ではなく「普通に戻す」治療
- 納得感と信頼感が治療継続のカギになる
監修:岩根 隆太(いわね りゅうた)
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