毎年受けている健康診断、なんとなく流れ作業のように終わらせていませんか?
検査結果を見て「基準値に入っているから大丈夫」と安心してしまいがちですが、それだけで本当に健康を判断できるとは限りません。
大切なのは、「自身にとっての正常値」を知ること。
そこで今回は、産業医として多くの企業に長年関わってきた医学博士・山本竜隆先生に、健康診断(健診データ)を自分の健康管理に活かす方法を具体的に教えていただきました。
健康診断を「受けるだけ」で終わらせないためのヒント、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事でわかること
- 健康診断で見るべき「自身にとっての正常値」の考え方
- 健診結果から注目すべき5項目とその読み取り方
- 健康診断で睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を受けたほうがいいのか
その不調、「仕方ない」で済ませていませんか?
忙しい現代を生きる多くの方は、身体の感覚より、体温や血圧といった数値で健康を判断する人が増えています。
「数値に異常がなければ問題ない」と思い込み、身体のサインを見過ごしてしまうことも少なくありません。さらに深刻なのは、「自分は大丈夫」と思い込んでしまうことです。
- 睡眠が6時間以下でも平気
- 寝不足でも、休日に寝だめすれば回復できる
- 昼夜逆転の生活に慣れているから問題ない
- 食事が遅くても仕方ない
- 動悸やめまいがあっても、時間が経てば気にしない
- 胃の不調は市販薬で十分
- 肩こりや腰痛は年齢のせいだから放っておく
- 頭痛は鎮痛薬で抑えれば大丈夫
- お酒はストレス解消になる
- 自分より不調そうな人がいるから、自分は大丈夫
- 不調があっても、それが“自分らしさ”だと思っている

専門家の立場から見れば、どれも生活の見直しや検査が必要なサインです。
しかし、多くのみなさまが「これくらい平気」と受け流してしまいます。
検査をすれば数値に異常が出るかもしれませんが、「今は休めないから」「知らなければ不安にならないから」と、自ら検査を避けているかもしれません。
「昔は元気だった」「家族に病気がないから自分も大丈夫」といった思い込みも、健康リスクを高める要因になるため注意が必要です。
健康診断のデータは「自身にとっての正常値」を見る
健康診断の結果が返ってきても、どこを見ればいいのかわからない……そんなふうに感じたことはありませんか?
診断結果にはA~Eの判定があるので、それだけチェックしがち。具体的に検査項目に並ぶアルファベットやカタカナの専門用語は、慣れていない人には難しく見えるかもしれません。
多くの方は、基準値を超えてチェックが入っている項目を見つけて「何か問題があるのかな?」と確認しますよね。
医師も同じように、血糖値やコレステロール値など、基準値(平均値)から外れている項目をもとに指導やアドバイスを行うのが一般的です。ただし、こうした平均基準はあくまで、多くの人のデータから導き出された目安です。
平均値の中であっても、人によっては “高め” だったり ”低め” だったり、個人ごとで傾向が異なります。

だからこそ大切なのが、「自身にとっての、正常値ライン」を把握すること!
平均値と比べるだけではなく、過去の自分のデータを見てみましょう。
健康診断の結果を数年分保管し、項目ごとの変化を見ていくと、自分のなかで安定している数値がわかってきます。
体調に大きな変化がなく、検査値にも大きなブレがない場合、その状態が自身にとっての“正常値”と考えられるでしょう。
また、同じ健診センターで検査を受けていると、前年・一昨年・今年と、3年分の記録が一覧で確認できることもあります。こうした経年変化をあわせて見ておくのがおすすめです。
可能であれば、毎年の結果をファイリングして保管し、新しい検査結果が届いたときに過去の数値と見比べてみましょう。年齢とともに、じわじわと少しずつ変化していく項目もあるかもしれません。
このように、ご自身の“基準値”を把握しておくことで、不必要に不安になることが減り、体調を崩して病院にかかったときも、過去のデータが診断の手がかりになることがあります。
とはいえ、検診結果にはたくさんの項目があり、すべてを覚えておくのは大変ですよね。そこで今回は、山本先生に「特に注目したい5つの検査項目」について伺いました。
健康診断結果:チェックしておきたい大事な「5つの項目」
健康診断の結果、つい「異常なし」だけ見て安心していませんか?
すべての項目を細かく確認するのは大変ですが、何年分かを見比べることで、少しずつ変化している項目に気づけることもあります。
とくに以下の5つの項目は、異常が出ていなくても過去と比べておくと安心です。
- 白血球数
- 血色素(ヘモグロビン)量
- γ(ガンマ)GTP値
- 血圧
- HbA1c(ヘモグロビンA1c)値
その1:白血球
白血球数は、体内で炎症や免疫反応が起きているかどうかを見分ける重要な指標のひとつです。細菌感染では増加する傾向があり、ウイルス感染では一時的に減少する場合があるとされています。
身体が回復に向かうと、炎症や免疫反応が落ち着くことで、白血球数も本来の水準に近づいていく傾向があります。
- 多い:細菌感染、がん、白血病などの可能性が考えられます。
- 少ない:重い感染症や再生不良性貧血などが疑われることもあります。
白血球の基準値(正常値の範囲)は、男女差はあるものの、おおよそ3,500~9,700/μLとされています。ただし、この範囲内にあっても、人によって「ふだんの数値」にはばらつきがあります。
たとえ基準値の範囲内であっても、自分の「普段の値」と大きく異なる場合は注意が必要です。
たとえば、普段は3,500~4,500の方が8,000になっていたら、体内で何らかの変化が起きているサインかもしれません。
逆に、いつも7,000~8,000の人が4,000程度に下がっていれば、それも見逃せない変化です。
検査時に「普段の健康診断ではこれくらいです」と医師に伝えることで、たとえ基準値内であっても、診察や対応が変わる場合があります。
このように、「基準値に入っているかどうか」だけで判断するのではなく、「自身にとっての正常値」を把握しておくことが、体調の変化に早く気づくための手がかりになります。検査のたびに白血球数を確認し、自身の傾向を記録しておきましょう。

その2:血色素(ヘモグロビン)
血色素とは「ヘモグロビン」のことを指し、血液中の酸素の運搬を担う重要な成分です。肺で取り込んだ酸素を身体のすみずみに運び、同時に二酸化炭素を回収して肺に戻すという働きをしています。
この血色素が不足すると、体内に酸素が十分行き届かず、動悸や息切れ、めまい、疲労感、頭痛など、いわゆる貧血の症状が現れることがあります。こうした貧血は、鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」と呼ばれています。
貧血の判定には、赤血球数やヘマトクリット値(赤血球の割合)も使われますが、もっとも重要なのは血色素量です。たとえ赤血球数が基準内であっても、血色素量が少なければ貧血の可能性は高くなります。
女性は特に気をつけている方が多いのですが、意外と男性も気をつけてチェックしたい数値です。
ヘモグロビンの数値が大きく下がっている場合は、大きな出血や貧血への移行が始まっている可能性があります。
男性でも症状があるケースが有ります。このような変化に気づくためにも日頃から自身のヘモグロビンの数値がどれくらいか把握しておきましょう。

その3:ガンマGTP
お酒を飲む習慣のある方なら、とくに気になるのが「ガンマGTP」の数値。
ガンマGTPとは、肝臓でたんぱく質を分解し、身体の中の毒素を処理する働きをもつ酵素のひとつです。
このガンマGTPは、肝臓や胆管に障害があると血液中に増えるため、数値が高くなることで肝機能の状態がわかります。
アルコールを飲むと一時的にガンマGTPが上昇しますが、飲まなければ比較的早く元に戻るのが特徴です。
そのため、健康診断の直前に禁酒をして、一時的に数値を下げるという方もいるかもしれません。
禁酒していてもガンマGTPが基準値(男性で79 U/L以下、女性で48 U/L以下)を超えている場合は、肝臓や胆のう、すい臓などに何らかの異常がある可能性があります。
また、検査の直前に風邪薬などを服用していた場合、数値に影響することもあります。
肝臓の調子が気になる方は、過去の数値に加えて、検査時の体調や服用していた薬の有無などもあわせて記録しておきましょう。
その4:血圧
日本人は塩分の多い食生活になりやすく、それにより血圧が高くなる傾向があります。
実際に、高血圧は喫煙と並び、日本人の生活習慣病による死亡に大きく関わる要因のひとつとされています。
厚生労働省のデータによると、高血圧を防げば年間10万人以上の命が救われる可能性があると推計されています。
それほど注意が必要な高血圧ですが、自覚症状がないため見逃されがちです。
しかも、血圧は緊張によって上がりやすく、病院や健康診断のときに高めの数値が出てしまうことがあります。
反対に、タイミングや環境によっては普段より低く出ることもあります。
日常的に血圧を測って自分の数値を知っておくことが大切です。測定は毎日同じ時間帯に行うのが理想で、起床直後や就寝前など、安静な状態で測るとより正確になります。
また、血圧計の使い方にも注意が必要です。最近は手首や指先で測るタイプもありますが、正しく装着しないと誤差が出ることがあります。どのタイプであっても、正しい方法で継続的に測定し、自身の血圧の傾向を把握しておきましょう。

その5:HbA1c(ヘモグロビンA1c)値
HbA1c(ヘモグロビンA1c)値は、糖尿病のリスクを見極めるためにとても重要な数値です。
血液中のヘモグロビンのうち、どのくらいが血糖と結びついているかを示しています。
肥満を気にしている方は、空腹時血糖値に注目することが多いようですが、空腹時血糖値は直前の食事の影響を強く受けます。たとえば、朝食を抜いて検査を受ければ低めに出ますし、食事をしていれば高く出ます。
そのため、空腹時血糖値だけを見て糖尿病のリスクを判断するのは困難です。一方、HbA1c値は食事の有無に左右されにくく、直前の食事で数値が大きく変わりません。
たとえば、前日に多く糖質を摂ったとしても、HbA1c値が急に上がることはなく、逆に検査当日に食事を抜いたとしても急に下がることはないのです。
たとえ血糖値が正常範囲内(70〜109)であっても、HbA1c値の基準(おおむね4.6〜6.2%とされています)範囲を超えている場合は、糖尿病リスクが高まっている可能性があります。早急に食事や生活習慣を見直しましょう。
睡眠時無呼吸症候群の検査も受けてみよう
健康診断のオプション検査として、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査が受けられる場合があります。
睡眠に不安がある方や、日中の強い眠気を感じている方は、一度検査を検討してみるとよいでしょう。
「いびきを指摘された」「寝ても疲れがとれない」といったことが当てはまる場合、SASの可能性があります。実際に多くの方に見られる症状で、検査をすると中等症〜重症と診断されるケースも少なくありません。

SASは自覚しにくい病気ですが、放置すると心筋梗塞や脳梗塞、高血圧、糖尿病などのリスクを高めることがわかっています。深い睡眠がとれない状態が続くことで、日常生活に支障が出ることもあります。
診断された場合は、CPAP(シーパップ)という機器を使った治療などにより、睡眠の質や体調が大きく改善されることもあります。追加費用がかかるかもしれませんが、健診のタイミングで一度しっかり調べてみると安心です。
出典:睡眠時無呼吸症候群(SAS) | e-ヘルスネット(厚生労働省)
まとめ:健康診断のデータをオプティマムヘルスに活かそう
健康診断は受けて終わりではなく、結果をどう活かすかが重要です。
基準値だけを頼りにせず、過去の数値と比較しながら「自身にとっての正常値」を知ること。それが、日々の変化に早く気づく力になります。
また、白血球や血色素量、血圧などの基本項目に加えて、睡眠に不安がある方は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査も視野に入れてみてください。
健康診断は、自分の身体と向き合う大切な機会です。年に一度の健診を、未来の健康につなげていきましょう。
この記事でわかったこと
- 数値が基準値に入っていても安心できるとは限らない
- 白血球数や血圧は過去の数値との比較が重要
- SASは重大な健康リスクにつながるため検査しておくのがおすすめ
関連書籍
オプティマムヘルスについて、もっと詳しく知りたくなりましたか?本記事を監修している山本竜隆先生の著書「「オプティマムヘルス」のつくり方 – 健康を実感できない日本人のための究極の処方箋」もチェックしてみてくださいね。
▼参考書籍

【書籍情報】
タイトル:「オプティマムヘルス」のつくり方 – 健康を実感できない日本人のための究極の処方箋
著者名:山本竜隆
出版社:ワニブックス
形態:新書
発売日:2021.12.08
監修:山本 竜隆(やまもと たつたか)
山本先生のプロフィールページを作成します。
*「睡眠養生」は株式会社310LIFE(サトライフ)の商標登録です。(商標登録:第6821898号)

